LIVE REPORT[過去のライブレポート]

LIVE REPORT [過去のライブレポート]

2020/10/05(月)@「Streaming+」

  • 出演アーティスト:KALMA/Mr.ふぉるて/ヤユヨ
  • 取材・文:奥“ボウイ”昌史
  • 撮影:田浦ボン

“新しい音楽との出会い”、そして“新たな才能を応援”というコンセプトのもと、関西で17年にわたり行われてきたライブイベント『GLICO LIVE NEXT』。今年はコロナ禍の影響を受け、“無観客ライブ配信”という形態で実施。
出演アーティストのライブ以外にも、楽屋インタビューほか、通常のライブでは見ることのできない映像も織り交ぜ充実の内容で送る。
今年3回目の開催となる今回は、KALMA、Mr.ふぉるて、ヤユヨと、ひときわ個性豊かなバンドが集結。
FM802DJ樋口大喜のナビゲートのもと、注目の3組が思い思いにその魅力を発揮した、熱い一夜をレポートします〜!

KALMA

開演前には、会場の心斎橋JANUSの屋上でくじ引き形式のテーマトークが行われ、「札幌以外の場所からの生配信は初めて」(vo&g・畑山悠月)と語ったのが、フロム北海道のスリーピースバンドKALMAだ。「楽しくやりまーす!」(畑山)とオープニングから軽やかに鳴らしたナンバーは『デイズ』。久しぶりの遠征、歴史あるイベントのトップバッターなんて気負いを微塵も感じさせずにビートを転がす1曲目から、バンドの持ち味が如実に伝わってくる。タイトなリズムに乗せ、「プリッツを食べながら一緒にラララ♪歌ってもらっていいですか?」と始まったのは『僕たちの唄』。メンバー全員が2000年生まれ、「飾らずにありのままをさらけ出す」と樋口が評するのも頷ける、みずみずしい楽曲を披露していく。

が、ここで突然「今日は無観客だからお客さんの声がないんだよ。だから2人ももっと歌って!」、「今のコール&レスポンス、予定してなかったじゃん?」(畑山)などと、バンドの内情をぶちまける光景も、微笑ましいやら危なっかしいやら(笑)。普段のスタジオリハの風景が思い浮かぶようなやりとりを、ステージ上でも力技で成立させてしまうキャラクターには早くも虜に。ライブ中にフロアから受け取ったセレクション・ザ・グリコ(=グリコのお菓子詰め合わせ)に、「こんなんなんぼあってもいいですからね」とさらりと返すのもさすがだ(笑)。

他にも、「大阪の皆さんが協力して作り上げている歴史あるイベントに、北海道の僕たちを呼んでくれてうれしいです。グリコのエピソードある? 俺はトマトが嫌いなのにプリッツのトマト味(=熟トマト)だけは食べられる!」などと気ままに話す姿は、ライブであることを忘れそうになるぐらいフリースタイル(笑)。フロアから上がった“そろそろ曲にいこう”とのカンペに、「いや、そうだと思ってたよ」(b・斉藤陸斗)、「もうイエローカードだから」(ds・金田竜也)と2人も納得のご様子(笑)。

気を取り直して、イントロから一気に空気を変えた『わがまま』では、歌詞をもじってグリコの品名を忍ばせるサービス精神を見せつつ、曲中にダメ出しする相変わらずさも見せつつ(笑)、最後は足早に『ねぇミスター』『これでいいんだ』とたたみかけ、持ち時間内にすべり込みセーフ!? その人懐っこさのみならず、青春狂騒曲とでも言うべき疾走感に満ちた楽曲群もポテンシャル抜群で、今後の躍進が楽しみな逸材がまた1組、『GLICO LIVE NEXT』に現れた!

ヤユヨ

結成1年にして『MORNING RIVER SUMMIT』『KANSAI LOVERS』など、関西の人気ライブイベントに出演。そのスピードを緩めず、このたび『GLICO LIVE NEXT』のステージに早くも登場するのは、大阪発のガールズバンド、ヤユヨだ。1曲目の『いい日になりそう』から、樋口が「天性のロックスター」と称するリコ(vo&g)がハンドマイクで堂々たるフロントマンぶりを見せつけ、何とも魅力的な歌声で惹きつけと、見る者の目と耳をひとときも離さない。

「『GLICO LIVE NEXT』、呼んでいただいてどうもありがとうございます!むちゃくちゃ楽しみにしてました。同年代の3組やし、すでに楽しいです。今日は新曲やろうかなと思ってます」(リコ、以下同)と流れ込んだ『(仮)アバラと火傷とロック』は、サビで四つ打ちにスイッチする新境地のポップソング。ぺっぺ(g)がエモーショナルなギターを存分にかき鳴らしたかと思えば、はな(b)の重たいビートに導かれた『メアリーちゃん』では、巻き舌で吐き捨てるように歌うメランコリーな失恋ソングに悶絶。続いて、「やっほー、ヤユヨです。皆さんはお家で見てるんですかね。近くにいい楽器があれば叩いてくれてもいいし、手拍子でもいいし、一緒に楽しんでください!」と誘った『ユー!』では、リコもタンバリンを手にステージを闊歩し、半分のけぞりながら(笑)全身でその想いを伝えていく。

「大阪府民としては、心斎橋(のネオンサイン)でおなじみのグリコ、いつもお世話になってます。あと2曲ですが、楽しんで帰りたいと思います。皆さんも楽しんでね。ありがとうございました!」

ラストは、ギターを奏でながら切々と歌い上げた『七月』から、ステージを降りフロアを動き回って熱唱した『さよなら前夜』と、その天真爛漫なパフォーマンスと底知れないバンドの可能性に惹きつけられた人も多かったのでは?ネクストブレイクを射程距離に、ぐんぐん勢力を拡大し続けるヤユヨ。きっと来年は、その名前をもっと聞くことになるだろう。

Mr.ふぉるて

「剥き出しの感情、吐息までもが歌になってます」と樋口に紹介されたMr.ふぉるては、SEもなく生々しく幕を開けた『さよならPeace』から、高純度のロックンロールを連発! 焦燥感をガソリンに疾走するビートとピュアネスが宿った『偽愛』、「画面の向こう側から歌ってくれよ!」(vo&g・稲生司、以下同)と呼びかけた『あの頃のラヴソングは捨てて』では、もがきながらその衝動と情熱を爆発させるような様に胸が熱くなる。

「今日はFM802さんとグリコさん、ホントに呼んでくれてありがとうございます! いいバンドが集まって、いい音楽が届いてるのかなと、さっきKALMAとヤユヨのライブを見て思いました。そして、自分たちも同じ日に同じ空間に立てることをとてもうれしく思います。でも、現実的な話をすると、いろいろ大変ですよね。わざと流してんじゃねぇかっていうぐらい、暗いニュースばかりで…みんなで助け合って輪になれたらいいなと思うんですよ。寂しい夜を送ってませんか?悲しい夜を送ってませんか?悩みごとの絶えない夜を送ってませんか?そんな人に聴いてほしい曲を」

そんなMCと共に放った『さみしいよるのうた』、そして、「大人になり切れない大人たちと、大人になりたくない少年少女へ!」と捧げた『シガレット』。層の厚いミドルチューンにも、立て続けに心が揺さぶられる。

「『GLICO LIVE NEXT』、楽しんでいただけてますでしょうか?普段は画面の向こう側のみんなが何に支えられてるか、何を心の柱にして生きてるか分わからないですけど、その柱が、KALMAで、ヤユヨで、俺たちであってほしいわけですよ。背中を押せる曲かなと思って作った曲があるんですけど…」と届けた『ジャーニー』は、そのMC同様、常に画面の向こうのオーディエンスに語りかけるようで、最後の『救いようのない世界で』まで、熱量高く一気に走り抜けた4人。「また必ずライブハウスで!」と固い約束を交わし、ステージを後にしたMr.ふぉるてだった。

STAFF COMMENT

アフタートークでは、樋口が読み上げるチャットやSNSの感想に恐縮しながら、その心境を語ってくれたMr.ふぉるての稲生。その後は、画面越しのオーディエンスに向け出演者3組のスクショタイムも実施され、今回も次代を担うアーティスト揃いの『GLICO LIVE NEXT』となった。なお、この日のライブの模様は10月8日(木)24:00〜『RADIO∞INFINITY』内にてオンエアされるとのこと。
そして、今年最後の公演となる11月11日(水)は“ポッキー&プリッツの日”ということで、年に一度のスペシャルバージョンで開催!
ラインナップは最終調整中ということなので、そちらも期待して待っていてほしい。