LIVE REPORT[過去のライブレポート]

LIVE REPORT [過去のライブレポート]

2021/07/20(火)@「Streaming+」

  • 出演アーティスト:NEE/PELICAN FANCLUB/なきごと
  • 取材・文:奥“ボウイ”昌史
  • 撮影:田浦ボン

前身イベント時代より“新しい音楽との出会い”、“新たな才能を応援”をモットーにはや18年。関西発のライブイベント『GLICO LIVE“NEXT”』が今年も開幕! 昨年に引き続き第一回目は無観客ライブ配信という形態で、FM802DJ樋口大喜のナビゲートのもと、出演者とのオープニング&アフタートークや終演後のスクショタイムの実施など、通常のライブでは見ることのできない試み満載でお届けする。2021年も、NEE、PELICAN FANCLUB、なきごと、と注目のライブアクトが集った幕開けの一日をレポート!

NEE

「『GLICO LIVE“NEXT”』、間もなく始まりま~す!」と早速、画面上に現れたFM802DJ樋口大喜が、チケットの早期購入者特典として送付されたプリッツ<旨サラダ>を紹介しつつ、“グリコブロック体操”なる運動でオーディエンスとともにウォーミングアップ。そのまま事前収録された“グリコ検定”の映像へ。まずはNEEがパピコにまつわるさまざまなクイズに回答。メンバーの素も垣間見られたそんな時間を経て、カメラはライブシューティングへとスイッチ。インダストリアルなSEを浴びながらフロアからステージへとプリッツを持って駆け上がった4人は、1曲目の『ボキは最強』からハンドマイクでまくし立てるくぅ(g&vo)が縦横無尽に動き回り、ハイテンションなグルーヴで会場を包囲。ロックバンドのダイナミズムとクラブミュージックの高揚感が共存するような特性を存分に活かし、『九鬼』でもハイエナジーなサウンドで立て続けに圧倒していく。

「改めましてNEEです、配信の皆さんよろしくお願いします!やっぱね、NEEは大阪が合うね」(くぅ)
「受け入れてもらえてるかな?(笑)」(b・かほ)
「車で来たんですけど、ずっとゲームしてて。よく酔わないで来たなって」(くぅ)

と自由極まりないMCでは、メジャーデビューアルバムのリリース&ツアーの開催もさらりと告知。『万事思通』ではジャストなブレイクと弾きまくりのカオスを行き来する構成でも魅せるなど、1曲ごとにバンドの底知れぬ奥行きを思い知るようなセットリストが続く。『不革命前夜』でも、存在感しかないかほのベースラインとコーラス、フルドライヴする夕日(g)のギター、多彩な音楽性を受け止める大樹(ds)のリズムワークと、大阪では二度目のライブにして歴史ある『GLICO LIVE“NEXT”』に出演を果たした理由を自身のパフォーマンスで証明。ラストの『アウトバーン』~『歩く花』までダイナミックに駆け抜けたNEEのライブは、2021年の『GLICO LIVE“NEXT”』に、また新たな才能が集うことを確信させる強烈な余韻を残した。

ライブ後には、1年ぶり二度目の無観客配信となったこの日のライブの感想と、リリースを控えるアルバムの裏話なども交えたトークも展開。PELICAN FANCLUBへとバトンをつないだ。

PELICAN FANCLUB

ライブ前の“グリコ検定”の映像では人気のドリンク、アーモンド効果についてのクイズに知恵を絞り答える光景にバンドの普段のムードの良さを感じさせつつ、久々の対バンライブへと意気込んだPELICAN FANCLUB。いざ、ブルーの神秘的な照明をかいくぐり舞台へと現れた3人は、SEを切り裂くフィードバックノイズから一転、躍動感のあるビートで幕を開けた『ディザイア』でライブをスタート。その演奏と佇まいだけでPELICAN FANCLUBとは何たるかをまざまざと見せつける3ピースの真骨頂に、画面越しにでも一気に引き込まれるド迫力のオープニングだ。高鳴る鼓動とシンクロするような緑の閃光もろとも脳内を占拠する『7071』のスリルと焦燥、「大阪から画面を通して日本中へ。皆さんの喜怒哀楽にかかった靄を取っ払いに来ました、どうぞよろしく」(vo&g・エンドウアンリ、以下同)と告げた『ハイネ』のはかなさと中毒性…狂気と美しさが同居するこれぞPELICAN FANCLUBな楽曲群を初っぱなから連発!

「もし、人類が自分と容姿、嗜好も全て同じ人になってしまったら、悩むことはなくなるでしょう。考えることをやめると思います、人の心が読めますから。でも、世界がそうなってしまったら、生きる意味をなくすと思います。自分は誰かを喜ばせるために悩んだり、誰かのために頭を使って考えることは、とても素敵だなと思うわけです。本当に自分と同じ人間がこの世にたくさんいなくて良かったと、心の底から思います。誰かの名前を呼べる、そんな世界に生まれて良かったと」

新曲の『Who are you?』でも、メジャーシーンに必要とされるポップネスを満たしながら、ロックバンドに求められる音楽的造詣とエグみを失わないピュアな輝きを放ち、その持ち味はアンセム『三原色』でも存分に発揮。「『GLICO LIVE“NEXT”』、今その手に持ってるグリコのお菓子を飲み込んで、一緒に歌えたら」と、『Day in Day out』では熱量の高いサウンドで時空を超えたシンガロングを扇動するなど、最後の最後の瞬間まで、PELICAN FANCLUBの個性と魅力を何度も再確認するような濃密な30分間だった。

のたうち回るようにギターをかきむしった壮絶なエンディングを経て、トークブースへと移動した完全燃焼のエンドウは「たくさんのスタッフの方々に見てもらえて、ある意味、有観客でした」と、『GLICO LIVE“NEXT”』への感謝と新曲への想いを改めて語ってくれた。

なきごと

水上えみり(vo&g)が「常日頃食べてますから」と自負した“グリコ検定”では、早速「さっき食べました(笑)」(水上、以下同)と糖質オフが売りのアイス、SUNAOに関するクイズでも大盛り上がり。そして、ADAM atのピアノも印象的な『スウィートホーム』のSEを背に、満を持してこの日のトリとして登場したなきごとは、暗闇の中で一身に光を浴びた水上が切々と歌い上げた『忘却炉』から、その世界観に一気に引きずり込む。「楽しい夜にしよう」と、『連れ去って、サラブレッド』ではポップでダンサブルなフレイバーでも魅了したかと思えば、『知らない惑星』では岡田安未(g)がエッジィなギターで切なき疾走感をけん引と、序盤からバンドのポテンシャルをサポートの山崎英明(b)、奥村大爆発(ds)らと共に色とりどりに見せていく。

「本日は『GLICO LIVE“NEXT”』にお呼びいただきましてありがとうございます!もうお腹いっぱいで、いっぱい食べたんですけど(笑)、その分のカロリーを消費するようなライブをしたいと思ってますので、ぜひ画面越しで楽しんでください。特別な日っていうのは、いつか忘れていっちゃうもので。だから、どうしても忘れたくない日のことを曲にしました。そういう日がある方は、ぜひこの曲を重ねて聴いてくれたらなと思います」

『憧れとレモンサワー』はそんなMC通り、胸を締め付けるあの日の情景を閉じ込めたような一曲。骨太なバンドサウンドにドラマを刻んだ、なきごとの突破口とも言えるみずみずしい可能性を感じさせる。

「グリコと言えば昨日も食べたんですけど、私はパピコがすごい好きで。人と半分こできるのも好きなんですけど、何よりふたの部分にロマンが、全てのうまみが詰まってると思ってまして。誰かにとってはいらない部分かもしれないけど、あの小っちゃい部分にアイスがある意味にときめきを感じます。どんな人にも、どんなものにも、絶対に存在意義があって、何があってもそれはそれでいて良いと、私は声を大にして肯定したいと思ってます。全てと言うのは…難しい。だからほんの少しでも、少しずつ少しずつ、自分の大切なものを大切にしたい。そういうことを残り2曲に込めて帰ります」

失われた日々をエモーショナルに奏でた『癖』では、ナチュラル・ビブラートがかかったような歌声がセンチメンタルな情感を増幅。ネクストブレイクの予感と説得力を漂わせ、「今日は画面越しだったけど、私たちロックバンドはいつでも、ライブハウスであなたを待ってます」と、オルタナティブな轟音が胸を貫く『深夜2時とハイボール』で締めくくったなきごとのライブは、2021年の『GLICO LIVE“NEXT”』の存在意義を確信させてくれた。

STAFF COMMENT

心地良い疲れのまま、なきごとの2人は樋口大喜と最新ミニアルバム『黄昏STARSHIP』やレーベルメイトのosageの話など多岐にわたる話題をリラックスした面持ちで話し、その後は出演者3組のスクショタイムも実施。こうして、今年最初の『GLICO LIVE “NEXT”』はフィナーレへ。なお、気になる次回の日程は9月14日(火)に決定。ラインナップは後日『RADIO∞INFINITY』及びSNS(@RI_802)にて発表されるとのこと!要チェック。