LIVE REPORT[過去のライブレポート]

LIVE REPORT [過去のライブレポート]

2021/09/14(火)@Streaming+

  • 出演アーティスト:the quiet room/the shes gone/This is LAST
  • 取材・文:服田昌子
  • 撮影:田浦ボン

前身の「GSGP PROJECT」を含めると18年で約70回という歴史を誇る、関西の人気イベント「GLICO LIVE“NEXT”」が、9月14日、今年2度目となる公演を無観客&配信のスタイルで開催。今回も先見の明がある同イベントらしく、the quiet room、This is LAST、the shes goneという注目株3組を大阪のライブハウス・Music Club JANUSに招へいし、各々のライブだけでなく、進行役であるFM802のDJ・樋口大喜と挑戦した「グリコ検定」や弾き語りステージ、さらに江崎グリコ製品の特典などが全国の視聴者を喜ばせた。そんな盛りだくさんな一夜の模様を紹介しよう。

the quiet room

菊池(Vo&G)が“楽しんでいこう!”と口火を切ると、予告どおりに愛があふれる「Fressy」と人気曲「Instant Girl」でハッピーな幕開け。軽快なビート、メリハリのきいた歌声、“大丈夫 きっと大丈夫”のリリック、斉藤が舞台から降りてキメるギターetc.。観客がいれば間違いなく全員が弾んでいたはずだ。また配信映像には至近距離でとらえる菊池のはにかんだ笑顔も映し出されオンラインならではのお楽しみ。すると菊池は“画面の向こうまで熱が伝わりますように”と願いを口にし、ここからは先月発表した1stフルアルバム「花束のかわりに」の曲を連投。
まずは“アイスでも食べない?”と「GLICO LIVE“NEXT”」にぴったりな「(168)日のサマー」の人懐っこいポップで夏の恋の妄想を膨らませると、メンバーの緊張が解けた様子もうかがえるMCを挟んで「キャロラインの花束を」へ。ロマンチックな物語は軽やかなサウンドで描かれ、画面は目には見えない“薔薇色”に。また次の「グレイトエスケイプ」ではシティポップの感触で夜を演出。揺らめいたり歪んだりするギターや、菊池がハンドマイクでフロアに降りカメラを引き連れ繰り出すラップ的ボーカルなどで表情も豊かだ。そして“俺たちの日常を取り戻したいなと……このバンドで過ごしてきた日常を肯定したいと思って作った曲をやって終わりたいと思います”(菊池)と「You」。明るい未来を見すえて鳴らすナンバーは前を向く言葉と相まってたっぷりの熱量。モニター越しに背中を押してくれるようだった。“また必ずライブハウスで会おう!”(菊池)の約束にもファンは勇気づけられたに違いない。

This is LAST

2018年結成の3ピースはSNSも沸騰させたキラーチューン「殺文句」でスタートダッシュ。絶望や苛立ちも記した日記のような詞世界は、繊細でありながら焦燥感を煽るバンドアンサンブルでよりエモーショナルに仕立てられ、菊池(Vo&G)は“離れていても一つになれますように”と画面の向こうへメッセージを送る。そして続くのは「距離」と「愛憎」。Z世代らしくさらけ出す日々は普遍の苦悩と悲しみ。歌でも弦でもまくし立てるが、時にまじるモノローグのような声やメロディアスな側面が耳心地をよくし、さらにスケールを広げる瞬間も。チャットには拍手や指差しの絵文字が並ぶ。
しかしMCでは朗らかさが前面に。しかも“俺のわがままボディはほぼグリコさんでできてるんですよ。最近だと「ぎっしり満足!チョコチップ」っていうアイスを1日に2個とか。それ考えたらグリコさんて俺のパパとママなんだと(笑)”(菊池)と、“大人”の心もくすぐって後半戦へ。
まずは「バランス」でサイドチェンジ。女性の視点で綴るバラードは切なさとやるせなさがぎっしりで、抑えたサウンドと歌声が内面をえぐるようでますます感傷的にさせるが、ゴールに向けては「君が言うには」から上昇気流を作って突き進む。傷つきもするがあふれる気持ちを、爽快なメロディと切れ味のいいプレイで華麗に昇華すると、“お腹減った(笑)”(菊池)と最終は「オムライス」。ボーカルも“ケチャップ派?デミグラス派??”とアドリブを入れて楽しさ倍増。“食べ物ソング”の持つ圧倒的な温かさで包み込み、存分に弾けて約30分間を駆け抜けた。

the shes gone

兼丸(Vo&G)が“ミニベスト盤的”と語る1stフルアルバム「SINCE」のリリースを10月20日(水) に控える彼らは、同作にも収めた代表曲「想いあい」を1曲目にセレクトし、そのセンチメンタルな響きで早々に会場と画面を“シズゴ色”に染め上げる。ボーカルの程よいざらつきも、耳なじみのいいメロディも、少しの浮遊感も絶妙だが、次の「嫌いになり方」ではいっきにテンポアップしてアッパーに。マサキのギターとDaishiのベースが小気味よくやり取りし、有観客ならクラップ&ハンズアップ&シンガロング間違いなしだ。本人たちも気分が上がった様子で、続くMCでは“そっか、お客さんいないのか。寂しいですね”(兼丸)と本音もポロリ。また“ライブハウスに行きたいな、このバンドは!って思ってもらえるように……”と加えて「SINCE」から2曲を連続させる。
ゆったりした美メロがぽってりした火の玉に重なる「線香花火」は、コーラスやギターで虫の音も聞こえてきそうな夏の夜を思い起こさせ叙情的。また「ラベンダー」では兼丸がアコースティックギターを手にして優しく静かな熱を曲に託す。そしてたどり着いた最終は「甘い記憶」。助走のようにゾクゾクを高めてからのキャッチーなサビのリフレインは耳に焼きつき、清涼感あるサウンドはうつ向きがちな毎日から解放し、心を軽くしてくれるようだった。曲前、兼丸はコロナ禍で無力さに気づかされたと話すとともに、“虚しさも優しさも歌にすることが唯一できることなんだなと……”とも。そんな言葉を体現したラストシーンはしばらく観客の記憶から消えないだろう。

◆「3バンドのフロントマンに出演バンドの楽曲を弾き語りカバーしてもらおうステージ」
3組のライブは終了したものの、そのあとにはイベント史上初の試みが!上記の企画名どおりボーカリストの3人がフロアにイスを並べて順に弾き語りでカバーに挑戦。その内容は……。

the quiet room・菊池遼/「ポニーテールに揺らされて」(This is LAST)
the shes gone・兼丸/「キャロラインの花束を」(the quiet room)
This is LAST・菊池陽報/「最低だなんて」(the shes gone)

それぞれがオリジナルとは違った質感を曲にもたらし、自分のものにするという離れ業。ここでしか聴けないレアなカバーには、#グリコライブで連動するTwitterに“音源出してほしい”の声も上がった。

STAFF COMMENT

なお、今回のイベントはアーカイブが9月17日(金)23:59まで視聴でき、9月16日(木)にはFM802「RADIO∞INFINITY」(24:00~)内で一部をオンエア。お見逃し&お聴き逃しなく!