Walkin' Talkin' -徒然ダイアローグ-

monday 21:00-22:00 ONAIR

1 week talking

1 week talking

山口 隆)僕がライブハウス出始めた頃、もう氣志團の名前はけっこう轟いてて。なんていうかな、それこそ、前の(バンド)ブームの、ファッション的なフォロワーな人が多かったから、それはある程度しょうがないのかもしれないけど、氣志團はそういうの、まったく関係なくやってた感じがあったんですよね。
綾小路翔)ほんとは、最初はお洒落したくてやってたんですけど、あまりにも全部が「行列」に見えたんですよ。たとえばHi-STANDARDがいて、HUSKING BEEがいて、SNAIL RAMPがいて、もう、役者が揃ってて。
山口 隆)そうですよね。
綾小路翔)その後ろに追随していく人たちが、ものすごい大行列でいたんです。
山口 隆)並びすぎちゃって(笑)。
綾小路翔)並びすぎちゃって、これもう見えねえぞと。で、それ以外に、たとえば、GUITAR WOLFがいたり、MAD3がいたり……。
山口 隆)そうなんですよね、ACCEL 4もいて。
綾小路翔)いた。ACCEL 4がいて。みんな革ジャン星人たちがそこにいて。そこももうすでに、大行列だったんです。
山口 隆)そうなんですよね。だからジェットボーイズに救いを求めたりなんかして。
綾小路翔)ジェットボーイズ、なんとなーく親しみやすいっていう。
山口 隆)ジェットボーイズは俺のこと、わかってくれるんじゃないかっていう。「ONE TWO F・・K YOU」っていう曲があって、あのシングル盤買っちゃったりなんかしてね。
綾小路翔)(笑)いや、ほんとに。

山口 隆)この、第1回のテーマが「ホームタウン」だそうです。「生まれた町のこと、好きですか?」っつうんですけど、僕は生まれた町が会津ってところで、もうね、好きですかも何もあったもんじゃなかったんですけど、翔さんはどうですか?
綾小路翔)僕は、その……たとえば福島の人たちからしてみれば、千葉なんて隣じゃん、と。東京の。
山口 隆)だからほんとに、なんていうかな、選手でいったら二岡とか。
綾小路翔)ええ、ええ。
山口 隆)そうゆう、走攻守そろってるみたいな感じで……。
綾小路翔)……二岡(笑)。
山口 隆)ま、東京は、四番バッターでどこーんと打つと。ピッチャーは、神奈川、横浜、横須賀、びゅーんと投げると。で、千葉なんつうのは、走攻守そろって……宮本、二岡ね。
綾小路翔)わははは。
山口 隆)そこらへんぐらいの勢いだから……だから、千葉の田舎って何言ってんの? って感じだったんですよ。
綾小路翔)いや、もう、千葉の田舎っていうのは、東北の田舎の町とほとんど変わらないですよ。
山口 隆)(笑)そんなこと。
綾小路翔)だけど、東京にものすごい、また違う憧れをしてて。実は情報が届くのはいまと違って、インターネットもないですから……あの、僕は両親が岩手なんですけど、岩手の実家に行くと、そこのいとこたちが「東京ってこんなの流行ってんだろ」って言って、よっぽど情報知ってるんです。
山口 隆)必死ですからね、田舎は。木更津はそうでもないんですか?
綾小路翔)まわりにはそういう人がいなかったんですけど、高校生のときに、木更津にそういう人たちがいることがわかって。
山口 隆)えー。
綾小路翔)その人たちにくっついていって、それまで自分だけで、ひとりで調べてたことが、一気に情報が入ってきて、ファッションのことも、わーって。で、その先輩たちが、サブカル好きの人たちだったので、ちょっと自分の町を盛り上げようってムーブメントがあって。
山口 隆)木更津を盛り上げようってゆう?
綾小路翔)木更津を盛り上げようって。その頃、僕らの5コ上、6コ上……二十、二十一くらいの先輩たちが、いわゆるロンドンナイトをたぶん体験してきて、それを「木更津でやるんだ」って言って。
山口 隆)へー。
綾小路翔)いまもあるんですけど、「ダイナマイト・ドンドン」っていうイベントが始まって。僕もそこに行ったのが、ひとつのターニングポイントで。
山口 隆)夜中、オールナイトでやるんですか?
綾小路翔)それが中途半端で、夜の10時から始まって夜中の2時に終わるってゆう。
山口 隆)(笑)ああ、いいっすね。15、16のときって、そんなの行けたら最高じゃないですか。
綾小路翔)いやもう、びっくりして。……そんときは、うちの中学校卒業したら、そのままの流れで暴走族に入らなきゃいけないとゆう。
山口 隆)はっはは。もう、エスカレーター暴走族で(笑)。
綾小路翔)楽しいは楽しいんですけど、ずっとクエスチョンもあって。ほんとにこれでいいのかなあと。しかも暴走族が、僕らのもっと上(の世代)は一番の花形だったんで、みんなわざわざロータリーまで観に行ったり、うちら、国道127号線てとこがあって、そこはみんな「ワンツーセブン」と呼んでて。ワンツーセブンまでみんな観に行こうって、女のコたちもキャーなんてやってた。

山口 隆)ギャラリーいたって言いますもんね。ギャラリーいて写真撮ってたって言いますもんね。
綾小路翔)それがもう廃れてきてるんですよね。怖い人たちにしか、もう思われなくなってて。
山口 隆)なるほど。だからつまり、もう、ヒップなところがちょっと、怖いっていうとこだけになっちゃった。
綾小路翔)先輩たちもだんだん殺伐とし始めてて。
山口 隆)昔はもっとポップだったんですか。
綾小路翔)ポップだったんです。ポップな人たちがやるもんだったんですけど、暴走族は。だけど、だんだんみんな……もう強制パンチだと。気合いが入ってないからって言って。
山口 隆)あー。
綾小路翔)僕、なぜかわからないですけど、輝ける16歳をパンチパーマで過ごすという……。
山口 隆)はっははは。
綾小路翔)もうなんだこりゃ、ってゆう。
山口 隆)そのイベントは土曜日になると行ってたんですか。
綾小路翔)ふた月にいっぺんしかないんです。
山口 隆)あー、じゃ、もうそれが楽しみで、みたいな。
綾小路翔)そのためにみんなお洒落して。
山口 隆)その2ヶ月間、楽しいっぱなしでした?
綾小路翔)もう、楽しいっぱなしでしたね。

山口 隆)氣志團は、やっぱりその「木更津」っていうホームタウンがあって、東京で、その文化をもって勝負して成功したみたいな感じがあって、すげえカッコいいなあと思ってて。
綾小路翔)いやいや、ありがとうございます。
山口 隆)僕らは、なんかこう、内に秘めた悲しいものみたいなのがあるんですよね。それを爆発させることが、たぶん、売れるとか人気出るとか、もしかして曲がいいとかよりも、重要だったんですよね。
綾小路翔)ああ、なるほど。
山口 隆)だからライブやって、あの頃、中国の歴史をね(笑)お客の前で、ずっと、こう、「中国、殷の時代では……」ってやって、《カンフーロック》っていう曲作って、近藤君と蹴り合いみたいなことをして、最後、ベストキッドの型をやったら曲が始まるってゆうのを……いまから思うとなんでそんなことをって思うんですけど、あのときはやっぱりやらずにはいられなかったっていうか。
綾小路翔)ええ、ええ。
山口 隆)氣志團も最初の頃は……いまでこそすごいですけど、総スカンとは言わないまでも、賛否両論はやっぱり……。
綾小路翔)ええ、そうですね。
山口 隆)賛否両論……これがまたね、武道館とかZEPPとか、あの賛否両論だったらまだいいんですけど、ライブハウスの賛否両論は一件一件が厳しすぎるんだ。胸に沁みすぎるっていうか。
綾小路翔)うん、うん。
山口 隆)僕なんかほんとにね、アンケートなんて……いまから思うとやんなきゃいいと思うんですけど、お客さんに来てほしいからやっちゃうんですよね。あれ、またね、すげえいろいろ書いてあるんですよね。なんかね、どこで見てるか知らないけど、音系サークルの女のコみたいな子に、「ドラムのキメが甘い」とか言われると……。
綾小路翔)(笑)。
山口 隆)もう泣きたくなりますよね。それで、そのあと、ブッキングマネージャーの人に呼ばれて、お金……ノルマ払うじゃないですか。
綾小路翔)はい、はい。
山口 隆)で、ノルマ払ったあとに、「君たちさー、あのさ、ビートルズってゆうのはスゴいバンドでね」とかって言われて。
綾小路翔)(笑)。
山口 隆)こんなの、またずっと聞かなきゃいけねえのか……。そうゆうわだかまりみたいなものを絶対またぶつけてやるぞ、みたいなところだったんですよね。だから、氣志團が出てきて、おお、すげえ、洒落てるぜって。で、僕はFACTORYで氣志團が出てるの観て、もう忘れられないのは「俺たちがやりたいのは、ここで今日やるのは、お嫁さん探し!」なんつってて。うわーっと思って。
綾小路翔)(笑)。

on air楽曲

テーマ「ホームタウン」
ビシバシ純情!/HILLBILLY BOPS
綾小路翔)木更津ってロカビリーが盛んな町だったんですよ。その中でもいちばんポップなバンドで、すんごく憧れたんですよね。ボーカルの方のカリスマ性があって。宮城君て、亡くなられちゃったんですけど。
山口 隆)「ビシバシ純情!」ってタイトルが、やっぱね、カッコいいんですよね。
綾小路翔)デビューしたタイミングで、それこそチェッカーズの対抗馬みたいな感じだったんで、職業作詞家・作曲家の方たちの曲を演奏するっていう。それがまたむしろ良かったんですよね。じゃなければ、たぶん、こういうタイトルって、街のロカビリアンが出す言葉じゃないんで。
This One's For You/Stuff
山口 隆)このバンドは「New York」って感じだったんですよね。当時、僕は会津で、土曜日にこれをかけると自分がニューヨークにいる気分になっちゃって。それだけで嬉しくなっちゃうというか。もう、その一週間を大事に生きてる。その、土曜日は妄想の中ですから、街ゆくおねえさんが、自分の彼女なわけですよ。
綾小路翔)あっははははは。
山口 隆)もう、趣味も自分と合っちゃったりなんかして。「ローリング・ストーンズ好きなの?」とか言っちゃって。普段なら絶対言えないようなことですよね。「イギー・ポップ好きだ」とか。だからそういうのの中で、このStuffがかかってて……。
綾小路翔)ちょっとお洒落ですもんね。
山口 隆)だけど、こうゆうのを聴いてる女の子もどこかにいてくれるはずだっていうのもあって。
オレたち/COBRA
綾小路翔)僕、中学生のときに組んだバンド、最初は、オリジナル(曲)で、学校の先生の悪口ばかりいってるみたいな。
山口 隆)がっはは。最高ですね。
綾小路翔)学園祭でやるようなバンドを組みたいと思ったときに……。
山口 隆)(笑)学園祭でやるようなバンドを組みたいって思うのがいいですね。この感じがわかってくれるといいんだけどなあ。ちょっとメジャーに寄ったというか(笑)。
綾小路翔)そのときに、でもやっぱり、みんながBOOWYやったり、ジュンスカやったりするけど、俺はちょっと違うんだってときに夢中になったのがこのCOBRAで。特にこのサビなんですけど、「あれだ、オレたちだって、バカじゃないぞ、頭いいんだぞ」っていう歌詞だったんです。世の中の人たちは、普通に聞くと、バカだって思うと思うんですけど、ものすごい知性を感じて。これはまあ、現LAUGHIN' NOSEのPONさんという方の、センスのある歌詞だなあっていう。あえてバカを気取りながら……。
山口 隆)ほんとそうですよ。氣志團に感じるような洒落感は、やっぱ、COBRAにも感じるんですよね、僕は。
綾小路翔)僕もこれ、すごいルーツで。COBRAって——その頃、みんな、髪の毛ツンツン立ててとか、オシャレな格好する中で——丸刈りで、Dr.Martin履いて、ちょっとこう、おどけたことをするんですけど。
山口 隆)やー、だからカッコよかったですよ。その、「バッハスタジオ」出て、最後、「バイツ! バイツ!」って言って、頭突きで終わる、ねえ。おー、このバンド、すげーカッコいい! と。
綾小路翔)PONさんとYOSU-KOさんがやる、ええ、「バッハスタジオⅡ」。はい。
山口 隆)あのドキドキ感はやっぱり……COBRAにありましたね。
綾小路翔)ダウンタウンさんとの、尼崎コンビがからむところとかが、面白いなあと。
山口 隆「オレたち、アホちゃうで」……おわぁーっって、この! 東北の少年にもね、おー、なんだこのバンドは! っていうカッコよさね。
綾小路翔)そうなんですよ。
どうにかなるさ/かまやつひろし
山口 隆)これがまた悲しい曲で。別れの歌っていうか。もう悲しい歌なんですよ。この、「男侘びせし」みたいな気持ちが、なんていうんですか、会津っていう町を自分は出て行きたいんですよ、やっぱり。なんか新しいことやりたい、ニューヨークでも東京でもいいんですよ、キラキラしたところに行きたいと。ここだと女の子と仲良くなれないかもしれないけど、他のところへ行ったらきっと仲良くなれるみたいな、そういうのがあったんですよ。
綾小路翔)うん。
山口 隆)あと、男の美学があるじゃないですか。
綾小路翔)そうですね。
山口 隆)マッチョな先輩たちのほうがほんとは男の美学あるわけですよね。だけども、これを聴くと、自分もちょっと、男の……いい気分になれる、みたいなとこがあった、ホームタウンだからこそ響いた、という曲でございました。

2 week talking

2 week talking

綾小路翔)ちなみに僕は、こういう風体で、「終わらない放課後」っていうのが氣志團のスローガンなんですけど、実を言うと、自分の中では青春は終わっています。
山口 隆)え!? ほんとですか? 僕が氣志團、好きな理由って、やっぱり青春がある……なんていうんですか、ユースが、もう完璧なユース・カルチャーが残っ……だって……。
綾小路翔)ま、そうですね。制服着て、“永遠のシックスティーン(16才)”と言ってますから。
山口 隆)……それは(青春が終わってるというのは)、もう宣言してるわけですか?
綾小路翔)そうですねえ、いまから10年くらい前……。
山口 隆)当てていいですか? それはやっぱり、氣志團が大ブレイクしたときってことなんでしょうか?
綾小路翔)2004年に、アリーナツアーをして、東京ドームを最終的にやったんです。
山口 隆)そうですよねえ。
綾小路翔)でも、いま、ヴィジュアル系の後輩たちの話を聞くと、みんな、はっきりいってドームできる実力はあると。ドームできる動員力持ってる。だけど、「ドームはやっちゃいけないんですよ」って言う。
山口 隆)へえー。
綾小路翔)なんでだ? っていうと、「ドームをやると、ピークになっちゃう」と。
山口 隆)はあー。
綾小路翔)だから、ドームをやるとしたら、2デイズとか3デイズやれる実力がないと。「ワンデイはできるんです」と、みんな。だけど、ワンデイで終わる人たちは、そこがピークになっちゃう、やっぱり2デイズできるっていうのがないと、ビジネス的にも上手くいかないですし、と。
山口 隆)ほえー。
綾小路翔)若い奴はね、考えてるんですよ。僕は、少年院に行くつもりで東京ドームをやるっていうか。
山口 隆)(笑)これから、お務め行ってきますみたいな。
綾小路翔)なんかわかんないですけど、ガキの頃に、「あいつ年少帰りらしいぜ」と。ハクですよね。でも単純に万引き5回やって行ってる奴もいるんですよ。
山口 隆)運が悪くて行っちゃったみたいな(笑)。
綾小路翔)盗んだ物が大きすぎて行っちゃったとか。
山口 隆)なるほど。
綾小路翔)だけど、僕のなかで、絶対に実現しなきゃいけないのが、ドームなんだと。こんなインチキバンドがドームまでやるっていうのが、ひとつの歴史じゃないかと。
山口 隆)ほんと、“氣志團現象”ですよね。
綾小路翔)そうですね。ま、いまはそうでもないですけど、当時は、デビューしてから最短記録でドームまで行ったんですよ。
山口 隆)スッゴいですね。
綾小路翔)……2年、3年ぐらい。
山口 隆)だから氣志團は、学科がまた違うのかもしれませんね。ロックンロール科なんだけど、なんかこう、ある意味、特待生みたいな。だけどそれがね、スポーツ特待じゃないんだな、なんかね。
綾小路翔)一芸入試みたいな(笑)亜細亜大学の。
山口 隆)(笑)そうそう、あの偏差値ぎらいの学長が。
綾小路翔)あはははは。
山口 隆)その、青春が……じゃ、ドームで終わった?
綾小路翔)そこで、さあ、こっからだと思ったときに、ま。そのあとにホールツアーとかを……2005年ですかね、その翌年、50何本まわったあたりで、メンバーたちからの申し出がありまして。
山口 隆)あ。なんですか?
綾小路翔)「ちょっとここらで1回休ませてくれ」と。
山口 隆)あ、ドームのときに、やっぱり走りすぎて……翔さんがわーっと行ってるけれども、みんな、ちょっと走りすぎてきたぞと。あー。
綾小路翔)単純にやっぱり、演奏の練習もできない、楽曲のクオリティももっと上げたい……。
山口 隆)そんな忙しかったんですか?
綾小路翔)すっごい忙しかったんですよね。ほんとにめまぐるしくやっていて、「音楽がおろそかになってるじゃないか」と。彼ら、やっぱり生粋のミュージシャンシップを持った人たちなので。で、僕はどっちかっていうと、そういう、なんていうんですかね、“山師”みたいなところありますので(笑)俺たち、休んじゃダメだと、休んだら終わるぞと。
山口 隆)はい。
綾小路翔)そう言ったときに、彼らは「休むとかじゃなくて、練習させてくれ」「曲を作らせてくれ」と。
山口 隆)ああー。
綾小路翔)バカヤロー、俺たちなんかいつか消えるんだ、でもその限界まで、42.195キロ走れないけど、いまここで止まっちゃいけない、いまは止まっちゃいけない時期なんだってことで、初めて衝突したんです。
山口 隆)おおー。翔さんVSほかの人だ。
綾小路翔)そうですね。で、6人メンバーのうち、1対5になって。
山口 隆)うわうわうわうわ、孤独だ。
綾小路翔)ま、でも、みんなの言ってる言い分もわかったんで、こいつらにもう一回、俺が言ってること信じさせなきゃいけないってことで始めたのが、DJ OZMAなんですよ。

山口 隆)ああー、するとその、DJ OZMA始めるときは、もうすでに青春ということじゃなく始まった、ということなんですか?
綾小路翔)そのときに、いろんなことが重なって。メンバーとは衝突する、そのとき大恋愛をしてたんですけど、それがそこで時を同じくして終わるという。
山口 隆)これが、またシンクロニシティが来ちゃって。
綾小路翔)はい。も、すべていろんなことが、どっかんどっかんと乗っかってきたときに、実は人生で初めてグレたという。
山口 隆)ぶわっはははは。ですから、もう、ほんとの意味でのグレたということですね(笑)。

綾小路翔)だからなんか、その青春時代は、なんだかんだ自分たち、苦労してた気がするだけで、そこそこなんでも美しかったですよね。苦労してんのも美しかった。みんなで貧乏自慢したり、「俺なんかお前、タマネギしか食べてねえよ」とかね。
山口 隆)そうですね。
綾小路翔)すべて若さで美しく終われたし。ま、ほんとに、「寝てねえよー」なんつうけど、寝なくても済む。
山口 隆)そうそう、修学旅行で寝てない自慢みたいな。
綾小路翔)ほんとにそんなもんだったんですけど、いよいよ今度は、年齢的な部分も含めて、“永遠のシックスティーン”とはうそぶくものの、本来、もう昔のように、ただただなんでも許された時代でもないですし。
山口 隆)そうなんですよねえ。
綾小路翔)あの頃は、いま思えば、それでも期待もされてたから、お金もかけてくれましたし、でもいまは結果しか求められない時代に入ってきたんですよね。
山口 隆)(笑)あれはすごいですよね。とにかく昔は「打席立ってさ、どんな球来るか、見てきなよ」なんつってたんですけど、いまは違いますもんね。「ハイ、7回。最悪、ゴロで転がしてください。ほかの人が走れませんよ」っていうことになってくる。なるほど。
綾小路翔)はい。絶対に塁に出なきゃいけないっていう。
山口 隆)「あなただったらできるでしょ。私たちはそんな……あなた、ちからがあるんですからやってください」みたいなことに、そう、なってくる。
綾小路翔)そうなんです。そして、もうひとつは、それに対して褒められなくなってくる。
山口 隆)あー! なるほどね。
綾小路翔)これが大人なんだなって。
山口 隆)あー、そっか!
綾小路翔)あの頃、子供だからなんでも、もう、版画とかで入選して、しょーもない作品です、お金にもならない作品です、だけど、親が、すかいらーくとか連れてってくれるわけですよね。
山口 隆)(笑)なるほどね、いいとこあって……ね。
綾小路翔)ファミレス連れてってくれて、「ハンバーグでも食べろ」って褒められたんですけど、いまは、そこで面白いこととか、いいライブやって、当たり前なので。
山口 隆)なるほど。そういうことでいうと、青春時代ではないかもしれませんね。

山口 隆)ぼくはもう、あの、他人様にいわれるのは、あの……近藤春菜さんが、たまに「サンボマスターじゃねえよ」っていう、あのネタ、やってくださってるじゃないですか。俺、浅草歩いてたら、女の子たち……女子高生がみんな俺のほう見て、あーとかつって、なんか喋ってて、お、すげえサンボマスター知ってくれてるんだとか思ってたら、5人くらいがでっかい声で「サンボマスターじゃねえよー!」って言って走ってったんです。
綾小路翔)あはははは。
山口 隆)「あはは、サンボマスターじゃねえよ」って……俺、サンボマスターだよ!
綾小路翔)あははははははは。
山口 隆)サンボマスターじゃねえか、俺……って。そうゆう、悲しい(笑)。あれ、なんなんですかね。でもやっぱり、僕らはロックだとかって思ってますけど、ライブハウスに来るひと以外って、僕らは相変わらず『電車男』で、やっと『電車男』じゃなくなったな、と思ったら「いろはす」なんですよね。「いろはす」、もうほかの曲になってるよ、っていうのがあるんですけど。
綾小路翔)うんうん。
山口 隆)ま、だからそういうのを、なんつうんだろ、青春が終わったか終わってないかわかんないけど、ま、しょうがねえなとは思うようになってきますよね。
綾小路翔)僕らなんかも、一時期、すごく厭だったんですけど、なんかもう、そんな、とっくに(放映が)終わってるよっていう……「木更津キャッツアイ! キャッツアイ!」とか。どこに行っても言われることは一緒で、それこそタイトルもよく間違えられて、「やってよ、『ワンナイト・ロックンロール』!」とか。
山口 隆)ひゃははは。
綾小路翔)『ワンナイト・ベイブルース』!……そんな曲やってないわ! とか、『ワンナイト・フェスティバル』!……惜しいわ! とか。
山口 隆)がっはっはっはっは。
綾小路翔)ええ、そういうの、よくあるんですけど。だから前は、デビューしたばっかりの頃は、カメラに向かってメンチ切ってくださいとか、ヤンキー坐りお願いしますとか、ツバ吐いてもらえますとか。当時、ほんとに厭で。
山口 隆)やっぱありました?
綾小路翔)あの、自分たち、そういうバンドではないんですけどーみたいなこと言ってたんですけど、最近はもう、なんでも仕事をいただけることの有難みを感じてるんで。
山口 隆)いやー、すごい。
綾小路翔)だから、それで「青春終わったな」って思ってるところはあるんですけど(笑)。

on air楽曲

テーマ「青春」
サマースクール/光GENJI

綾小路翔)僕の永遠のアイドルですけども、これはセカンドアルバムの2曲目というですね、世の中的にはどれだけ知られているかわからないんですけど、僕ら世代の女の子たちは、けっこう知ってる人が多いっていう曲なんですが。
山口 隆)なるほどなるほど。
綾小路翔)このアルバム『Hi!』に関してはですね、人生でもっともよく聞いたといっても過言ではないアルバムで。
山口 隆)そんなに聞きました?
綾小路翔)小学校5年生、6年生くらいから今日に至るまで、とにかく聞き続けてきていて。
山口 隆)名作じゃないですか、それは。
綾小路翔)ものすごい名作で、たまに中古レコード屋とかのワゴンセールでこれが並んでると必ず買うという。
山口 隆)そこまでの!
綾小路翔)こんな名作を、500円とか100円とかで投げ売りされてる場合じゃないと思って、だからたぶん、家に30枚くらいは常時あります。
山口 隆)(笑)。
綾小路翔)で、たまに友達にプレゼントするんです。これ、聞いてくれと。
山口 隆)その「サマースクール」。今回、青春の1曲ってことで?
綾小路翔)もうあの−、初恋の曲で。まさに小学校5年生のときが、僕、初恋なんですけど、転校生の女の子で、岩手からの転校生で、サノさんっていうんですけど、転校してきて、「サノさん、席どこにしようか」っていうマンガみたいなことが起きたときに、僕、いちばんエバってる奴のいる、左の隅のあそこで、「どっから来たの。どこからの転校生?」
山口 隆)俊ちゃんの席だ、俊ちゃんの席だ。
綾小路翔)「岩手です……」岩手どこ? なんつったら 「釜石です……」。なんだ、隣だ、俺の両親の実家、遠野だもん、つったら、じゃあお前、隣でいいじゃんって、で、隣になった女の子なんです。
山口 隆)かっこいいべー(笑)ドキドキだなあ、それ。
綾小路翔)ほんとにそれが、初めて異性を……。
山口 隆)意識した?
綾小路翔)これが恋だって思って。そのとき、夏休みに、いままで登校日なんで面倒くさくて行きたくなかったんですけど、初めて登校日が恋しくなって。
山口 隆)恋しくなっちゃって! 早く行きたいと思っちゃって!
綾小路翔)会えないのがつらいと思ってて、で、登校日に行ったら、彼女は帰省してて来なかったんです。
山口 隆)これはがっかりしたでしょうね。
綾小路翔)ほんとに落胆して帰ったんですけど、そのときにまさにこれは、「サマースクールがあるんだけど、彼女は来なかった。君はどうして来ないんだ」ってことを、みんなが盛り上がってるサマースクールのあいだに、その日に降ったスコールを見ながら想うという片思いの曲なんですけど。
山口 隆)忘れられないですね。
綾小路翔)一生忘れられないです。いまだに胸がキュンとするし、ちょっと痛くなるっていう。

サラリーマン/忌野清志郎
山口 隆)上京して、まずびっくりしたのが、人があんなにいっぱい電車に乗ってるのか、っていうことなんですよね。「大学行って、4年後、俺はこういう暮らしになんのかと思って。こういう暮らしは自分にはできないな、でも4年後になるとこんなことになんなきゃいけない……」って思ったときに、再放送で『ぼくの就職』——もちろん、リアルタイムでも観てたんですけど——『ぼくの就職』っていうドラマの主題歌がこれだったんですよ。
綾小路翔)はああー。
山口 隆)歌詞がすごくて。「サラリーマンの人生は終わんない」と。「映画のようには終わんないよ、ずっと続くよ」で、「子供じゃなければ誰でもふたつ以上の顔を持ってるよ」っていう風に清志郎さんが歌うんです……あの頃に戻れば、キヨシローが僕に歌うんですよね。で、サビが(歌う)「サーラリーマーーーン」て、ほんとに悲しいんですね。「心の傷三つ四つ、当てもなく漂うだけ」。うわー、俺、いまの青春でも心の傷三つ四つ漂ってんのに、大人になってもなのか、でもキヨシローが言うんだから間違いないな、キヨシロー、こんな歌うたわないでくれよ、でもすっげえいい曲……俺、就職……俺、これからどうなっちゃうんだろうっていう悲しい気持ちの曲が、この「サラリーマン」、こういう感じの青春だったという。
綺麗な首飾り/BLANKEY JET CITY
綾小路翔)これはたしか、『METAL MOON』っていうミニアルバムに収録されていた曲なんですけど、たぶん僕が高校2年生か3年生くらいの頃にリリースされたもので、あのー、BLANKEY JET CITYは、中学校3年生かな? ……のときに、イカ天で出てきて。
山口 隆)リアルタイムでした。
綾小路翔)僕も、ビデオ録って……いまだに全部取ってあるんですけど。
山口 隆)僕らのときは、サイバーニュウニュウが仮イカ天キングのときから、やっと流れ始めたんです。でも話は聞いてたんです。すごい番組があるって情報は知ってたんです。FLYING KIDSって誰なんだ? BEGINって誰なんだ? ね、RABBITって誰なんだ?
綾小路翔)ラビットォ!
山口 隆)マリア観音って誰なんだ?
綾小路翔)マリア観音(笑)。
山口 隆)誰なんだってずっと思ってた。その、グランドイカ天キングなんですね。
綾小路翔)ちょうどサイバーニュウニュウのあとに、たまが出てきて、たまがサイバーニュウニュウに勝って、それと、MARCHOSIAS VAMPが出てきて。
山口 隆)カブキロックスとか、いろいろ出てきたときですよね。
綾小路翔)で、そのときに、BLANKEY JET CITYを観て。あの番組では一風変わってるなあっていう。
山口 隆)異質でしたよね。
綾小路翔)すぐに夢中になって。高円寺20000Vに当時、観に行って。まだ、それでもそんないっぱいになってなかったですね。イカ天効果で相当客は入ってたと思うんですけど、ゆうても、僕が当時観に行ってたライブに比べると少なくて。
山口 隆)なるほどなるほど。
綾小路翔)ただ、カッコいい……! と思って。たぶん、今日初めて言うんですけど、僕、BLANKEY JET CITYになりたかったんです、ほんとうは。
山口 隆)なるほどねえ。
綾小路翔)そう思って東京出てきたんですけど、残念なことに、まったく違う方向に来てしまったという。あんな風に、喋らなくてもかっこいい、喋らないで済む……。
山口 隆)そうなんですよね。
綾小路翔)それでむしろ、みんなが想起する、いろんなことを。
山口 隆)これに、まず挫折してますから。
綾小路翔)そうなんですよ。
山口 隆)もう、出てきたときからすぐ喋り出す。僕なんか、最近、ライブの注意だって僕が言ってますから。
綾小路翔)あははははははは。
Move On Up/Curtis Mayfield
山口 隆)高校に行くと、みんな大人になってく感じあるんですよ。やっぱりみんな彼女ができたりですね、俺も夜出歩くようになったりですね。その中で、「俺は都会を知ってるぜ」……知らないんですよ、行ったことないんですから。またね、都会の孤独に憧れるんですよ、また。「俺は今日も、帰ってひとりだぜ」……ひとりも何もないんですよ。親父もお袋もいるんですからね。卵焼き作ったんだから早く食べなさいとか言われながら、いるわけですよ。もうクリスマスだっていうのに、親父はタコの刺身とか食っちゃって、なんのアレもねえ、みたいになっちゃって。
綾小路翔)ははははは。
山口 隆)そんななかでこの曲は、自分が逃げ込むシェルターみたいな……。ここでカーティス・メイフィールドが「パーパ、パッパ、パパパー」ってやると、なんか都会の行動する人みたいになっちゃって。だからこの曲聞いてるだけで、俺はニューヨークを走ってる奴みたいなイメージになっちゃうんですよね。
綾小路翔)やっぱり山口さんは、会津の真夜中に、ニューヨークにいたんですね(笑)。

3 week talking

3 week talking

綾小路翔)僕らが子供の頃に、四十代以上のロックンローラーなんて、ほとんど存在していなかったわけじゃないですか。
山口 隆)ローリング・ストーンズ以外、いなかったんですからね。
綾小路翔)二十代で亡くなっちゃうみたいな……。それが現在は、みんな長生きすると。
山口 隆)長生き時代。皆さん現役で、人気もありますからね。だから先輩だらけといってもおかしくない。だからそんななかで僕なんか、ライブハウス、ジャパニーズハードコア、いろいろ噂に聞いた、海千山千のかたたちが、僕らなんか、下っ端のくせに、生意気なことばっかり言ってやるわけですよね。壁なんかダーンなんて蹴ったりして、そんなくらいでなんかやってやったと思うような。だけど、あのとき、僕らがつぶされずにこうやってやれたというのは、群雄割拠の時代が過ぎて、みなさん、戦国武将ですから。信長がいて……信長だけで50人くらいいるんですからね。信長50人、上杉謙信60人みたいな、みなさまが、もうね、それぞれ天下統一なさったあとだったんです。僕らは。これはもう、天下を統一なさったから、とにかく優しかったんですよ、僕らに。
綾小路翔)それはあるかもしれないですね。
山口 隆)これはいい時代だったですよ、僕らは。優しくしていただきましたから。
綾小路翔)だからほんとは、あの先輩たちの時代に僕ら、生まれたかったんですけど、あの、ほんとはそこの、いちばん熱かったシーンにいたかったっていう気持ちはあるけど、実際にはいなかったから生きてるっていうところは……。
山口 隆)そうですそうです。
綾小路翔)遅れて生まれてきたから、なんですよね。
   ★   ★   ★
山口 隆)逆にいうというとですよ、翔さん、後輩にも俺、それができてんのか、と思うんですけど。
綾小路翔)僕はそれが下手で。
山口 隆)あ、やっぱそうなんですか。
綾小路翔)いちばん下ってラクなんだなってとこもあって、先輩大好きなんで、僕。先輩んとこにいって、アホな後輩って扱ってもらうのがいちばんラクだったんですけど、ここ最近ですね、ここ最近になって、自分のなかで少しだけ、こう、使命感みたいなのが出てきて、やっぱり繋がらなきゃいけないなーそろそろ、っていうか。僕ら世代のミュージシャンたちで、なにか起こさなきゃっていう……だから、よくあれがあるじゃないですか、ベース会とか、ドラム会。
山口 隆)そう! もう、うちの木内が、また、仲良さそうにしてんですよ!
綾小路翔)僕も、ベース会だけ行ったことあるんですよ。
山口 隆)え? ええ、ええ? あ、ベース弾かれること……。
綾小路翔)そうなんですよ、ファンタってドリンクのバンドやったときに、僕ベース役だったんで、その日は呼んでもらえて行ったんですよ。そしたらね……。
山口 隆)どうでした?
綾小路翔)もう、もんのすごい盛り上がりですよ。
山口 隆)あー、やっぱり! あー、そうなんだ!
綾小路翔)だから僕ね、わかったんですけど、対バンとかやって、みんなで打ち上げとかやると、やっぱりね、ベース……リズム隊って、感じのいい人、多いんですよ。
山口 隆)ああ、そうですね。
綾小路翔)あの人たちが中和してるんですよね。バンドなんて、ほんとだったら、ミュージシャンなんて、こんな我の強い人間たちがぶつかって、一緒にやってられるわけないのを、なにか、こう、マイルドにさせる人たちで、だからベース会とドラム会だけはすげえ盛り上がるけれど、ギター会とかボーカル会が絶対ないのは、たぶん喧嘩になると思うんです(笑)。
山口 隆)もう「おまえはダメだ」「おまえもダメだ」みたいな(笑)。そうなってくると、フラワー・カンパニーズのグレート前川さんみたいな……。
綾小路翔)だいたい幹事やってますね、前川さんが。
山口 隆)ああゆう、人格者っていうか、人望ある人……。やっぱりボーカルとギターって、なかなかないんですかねえ。
綾小路翔)不思議なもので、誰も発起人にならないっていう。
   ★   ★   ★
綾小路翔)だから自分も、別に派閥を作ろうなんてまったく思ってないんですけど、かまってくれる後輩たちがいるなら、さらなる先輩とつなぐとか、遊びに連れてってみるかとか。
山口 隆)そこなんですよ。たとえば、よく、「何かに行きましょうね、レコード買いに行きましょう、何しましょうね」って言ってくれるんですけど、そのとき困りませんか。これ、自分が誘ったほうがいいのか……誘われたら「えー、行きたくねえよ」みたいに思うかもしれない。としたら、その人たちに悪いなってことも思っちゃうんですよね。
綾小路翔)そうっすねえ。
山口 隆)なんか、「音楽のお話を聞きたい」と、「山口さん、教えてください」っていうんですけど、自分の音楽の話をしても絶対つまんねえだろうなと。……それは、この前、確信持ったのが、よく行く浅草の古着屋さんに、二十四、五歳の女の子が、よく来るお客さん同士でいて、僕、喋ったんですよね。お綺麗な人なんですよ。
綾小路翔)うんうん。
山口 隆)でもね、けっこうショックだったのが、自分としてはもう最大限の、なんつうんすか、攻撃でいったら最新の戦術でやってるつもりなんですけど……おアクビをなさいまして。
綾小路翔)ははははは。
山口 隆)いや、これもう打つ手ねえわと思いまして。これはやっぱりダメだと。どうしたらいいのかわからない。つまり後輩、特に女の子。これは困りましたよ。どうしてます? もうここからは攻め込まなくていいかと思うタイプなのか。でも翔さん、けっこう頑張ると僕はお見受けしますけど。
綾小路翔)やっぱり心の折れる瞬間はありますよね。
山口 隆)ありますか(笑)。
綾小路翔)ええ。ほんとに、興味を、「あ、一切持ってもらえてないな」ってゆう。
山口 隆)(笑)わかりますよ。
綾小路翔)だけど、いままで自分を支えたのは、すべてあのときの感情なんですよね。
山口 隆)あのときの感情(笑)。どういうことですか?
綾小路翔)というのもやっぱり、確実に僕らみたいな見た目の人間、嫌いだろうなあとか。興味ないんだろうな、とか。もう確実に違うバンドさんに夢中だったりするわけですよ。それを、このあと俺はステージで、こいつの心にものすごい疵痕を残してやるんだーと思って。
山口 隆)(笑)忍び込んでやるぞ、と。
綾小路翔)そこで、一気に脳内のいろいろな物質が活発に活動し始めて、急遽、本番に向けて、それこそ戦術がぶわーっと湧いて来るんですよね。あの瞬間……ああいうコンプレックスというか、悔しさっていうのが、あって、で、その子が振り向いた瞬間っていうのが、ほんとにですね、自分にとってのいちばんのエクスタシーというか。

綾小路翔)でも、いままでふたり、いるんですけど、対バンしてくださるってことで、本番前に、楽屋にご挨拶に行って。すいません、氣志團です、今日はほんとにありがとうございます! って言ったら、ドアがちょっぴりだけ開いて、「握手すんのは、終わったあとにしようぜ」バン! て閉まったんです。
山口 隆)おー。
綾小路翔)それは、吉川晃司さんですね。
山口 隆)おおー。
綾小路翔)でも、そうだなと僕、思って。対バンていうのは、戦いじゃないかと。そんな馴れ合いから始めんのやめようぜと。まずはステージで激突して。で、全部終わったあとに吉川さんのほうから、「よかったね。かっこよかったね」って言ってもらって、握手を初めてしてもらう。
山口 隆)おーおー。
綾小路翔)これ、同じ事を言われたのが、the pillowsの山中さわおさん。「俺たち、まだ友達じゃないよね」って言われて。
山口 隆)へえええー。

綾小路翔)したら、ライブのMC中にですね、「翔やんて呼んでいいかな?」なんて言ってくれてですね。それからすごく仲良くしていただいてるんですけど、僕らもそうだなっていうか。確かに、いま最近の若いバンドは、みんな、すごくデキてて真面目で、フェスのバックステージって、半分、なんかテレビ局みたいになってて、みんな楽屋に来て「失礼しまーす! 今年デビューすることになった○○○です!」って。
山口 隆)はいはい。
綾小路翔)実は、意外に僕ら、やったことなくて。決して生意気なつもりじゃないんですけど、でもそれはヘンな気がしてて。むしろ終わったあとに話しかけられたときに、初めて挨拶する、みたいな。
山口 隆)ライブを観てくれ、と。
綾小路翔)ええ。やっぱり、ロックバンドなのに先輩も後輩もねえだろみたいな。そういう気持ちも実は半分あるんですよ。
山口 隆)なるほど。やっぱりやり合って、土手で寝っ転がって……。
綾小路翔)「やるじゃん」。
山口 隆)「おまえ、強いな」……あれをやりたいわけですね。
綾小路翔)そういうところはすごくあって。

山口 隆)やっぱり年代なんですかね。あの、僕らの上の世代の人たちに人間力が飛び抜けた人たちが多すぎる。
綾小路翔)アラフィフのかたたちですかね。だからそこで戦っても意味がないと思って、僕は早い段階で目が覚めたんですね。僕はこういうタイプのロックンロール、まんまの身を滅ぼす生き方しかできないで、やっぱり亡くなっちゃった人たちもいっぱいいますし。あのー、チェルシーっていう、ハードコア界伝説のギタリストがいまして、古くはPOISON ARTSですとか、DEATHSIDEとか……。
山口 隆)DEATHSIDEっていったら、海外でも、ねえ。
綾小路翔)ええ。最終的にはPAINTBOXってバンド もうほんとのパンクだったんで、僕ら、よく対バンしたんですけど、チェルシーさんが来ると、なんにも持って来ないんで、「お前ら、誰かギター貸して」って言われて。
山口 隆)おおー。
綾小路翔)「チューニングして。で、差しといて」って、ローディーなんですよ、いきなり(笑)。
山口 隆)すごいですね。
綾小路翔)でも本番、ダーーーーッと弾いちゃうんですよ。どんなギターでも。ま、すんげえウルテクなんですけど。そのままニコニコ帰っていくし、財布の中にはいつも200円くらいしか入ってないんですけど。
山口 隆)ぎえー。
綾小路翔)で、あるとき、僕らが、《原宿暴動》っていうフリーライブを、代々木公園でやったんですね。デビューしたばっかりの頃に。で、結局、ふた開けたら2万人くらい来てくれて。
山口 隆)2万人集まったって言いますもんね、あのときね。
綾小路翔)僕らもびっくりです。ほんとに歩道橋まで人でいっぱいで、みたいな状況になってて、もう厳戒態勢だったですね。もう、すごいガードマンだらけで。で、楽屋入ったら、そのチェルシーさんが普通にビール呑んでて。
山口 隆)はい(笑)。
綾小路翔)どーやって入ったんですか?! どーやって……って言ったら、「お前らの楽屋、絶対ビールあるからなー」って言って、嬉しそうに呑んでて。でもそのあと、亡くなられたんですけど。ほんとに、ちょっと我々には理解できないんですけど。
山口 隆)ほんとにステイフリーなかた。なんかいてくれるだけで嬉しいみたいなの、あるじゃないですか。でも実はそういうかたたちのほうが、分け隔てなかった気がするんですよ。なんでかっていうと、サンボマスターって初めてやったときに、やっぱ認めてもらえないんですよね。でもそんななかで、いわゆるパンクのハコ、僕らには新宿Wallってとこがあったんですけど。
綾小路翔)あの、初台の?
山口 隆)そう、初台のWall……。
綾小路翔)あの、隣の立ち食いうどん、美味いですよね。
山口 隆)やー! よく知ってますねえ(笑)。さすが翔さんですね。僕ら、Wallのかたがたが「お前ら、面白いな」って。「面白いけど、山口、おまえのギターはピーしか言わないよ。わからないから、ちゃんと聞こえるようにやれよ」と。あ、わかりましたって言って。そういう方々が、分け隔てなく僕らを誘って、「おまえら面白いから、来月も出ていいよ」って。そんなこと言われたことなかったから。いまだに、だからそういうパンク/ジャパニーズ・ハードコアのシーンの人に対するドキドキ感ていうのは僕はあるんですよね。
綾小路翔)ねえ。
山口 隆)でも、翔さんは……僕、自分、相当音楽オタクだと思うんですけど、いわゆるジャパニーズ・パンク/ジャパニーズ・ハードコアの知識は、翔さんのほうが何倍もありますからね。
綾小路翔)いやいやいや(笑)。
山口 隆)ほんと詳しいですよね。
綾小路翔)かなり偏ってるんですけど、好きで、夢中で、なんか、初めて見たんですよね、こんな人たちがいるんだ、ニッポンにこんな人たちがいるんだって。なんとも形容できないですよね、ああゆうカッコよさは。いま、若者たちでそれを理解できる少年たちはなかなかいないかもしれないですけど、でもやっぱり彼らにしか出せない……どうやってレコーディングしてるんだろうこの曲、みたいな。
山口 隆)そうそう、ほんとそうなんですよね。僕から見ても、エキセントリックってあるじゃないですか、うわ、かっこいいなっていう。だから全然海外よりもこっちのほうがすげえじゃんていう。
   ★   ★   ★
綾小路翔)だから、サイコビリーがすごい好きで、観に行って、パンチ合戦に巻き込まれて、怖い思いしたりとか、だからその頃の先輩たちが、みんな仲良くしてくれるんで。
山口 隆)それはすごいですよね。でもそれは、やっぱ翔さんにそういう、リスペクトの気持ちがあるのが伝わるんじゃないかと僕は思うんですけどね。
綾小路翔)その「好き」っていうことを伝えられる環境を自分で作るっていうことになったとき、初めて仲良くしてもらえるというか、認めてもらえるようになるので。

on air楽曲

テーマ「先輩・後輩」
クロマニヨン・スタンプ/ザ・クロマニヨンズ
山口 隆)これは真島(昌利)さんがお書きになった曲。もう自分の中のロックンロール……完成してる、ポール・マッカートニーなんかと同じ感じですよね。大スターっていう。
綾小路翔)フェスで観るとき、ものすごいかっこいいですよね、あのふたり。
山口 隆)あれですね、始まると、出演者も、
綾小路翔)外タレ来てる状態?!
山口 隆)もうキッズと同じだから、観た? 観た? って、そんなくらいすごいと思います。
綾小路翔)ヒロト&マーシーと矢沢の永ちゃんは、みんなが楽屋から出てきちゃうという。
茜色の夕日/フジファブリック
山口 隆)これは、フジファブリックさんは、この……。
綾小路翔)後輩なんですよ。亡くなったボーカルの志村正彦っていうのが、僕のバイト先の後輩で入ってきて。
山口 隆)あら、ほんとですか。
綾小路翔)ライブハウス兼スタジオの東高円寺ロサンゼルスクラブってところで、一緒に早番をやってた仲で。それで、バンドやってるっていうんで、あるとき、「実は曲ができたんで聞いてください」なんていって、MDのあの、MTRですかね、それで聞いて、「武田の心」ってゆうですね、あいつが山梨出身なんで、武田信玄から取って、「武田の心」っていうんですけど、曲は、完全に奥田民生さんと吉井和哉さんがミックスしてできたっていうような、一発で、そのふたりが好きなんだろうなっていうのが分かる曲で。
山口 隆)なるほどなるほど。
綾小路翔)そのあとに、僕らのスタジオってちゃんと仕事つづけたら、みんなバンドやってる奴ばかりなんで、店長がご褒美にレコーディングしてくれるんですよ。
山口 隆)ははは。すげえ!
綾小路翔)だいたいみんな、18,9で入ってくるんで、初のレコーディングだったりするんですけど、そんときに、じゃおまえ、正彦もやってもらえよ、なんていって録った曲が2曲あって、それが「ダンス2000」ていう曲と、この「茜色の夕日」だったんです。
山口 隆)へえええー。
綾小路翔)僕はびっくりしちゃって。当時19歳……ですかね、19のガキがこんな曲、さらっと作っちゃってんのと。世の中の誰も知らないこいつが……ま、びっくりしたんです。
山口 隆)うーん。
綾小路翔)そしたら、ま、みんな一度はかかるアレで、上京してきたけど、思うようにいかなくて、「帰ろうと思います」と。山梨に。バンドはもうやめんのって聞いたら、「向こうで、また呑気に……」みたいなこと言うから、あの「茜色の夕日」って曲、くれないかと。
山口 隆)くれないかっつったんですか?
綾小路翔)「え、なんでですか?」っていうから、あの曲はすごいわと。もちろんクレジットはお前の名前でちゃんとやるので。
山口 隆)あー、なるほどなるほど。この曲、すげえいいから頑張れよじゃなくて、俺にくれと(笑)。
綾小路翔)俺たち、たぶん、このあと曲が必要になってくるから、くれって言ったんです。そしたら、「なんでですか?」っていうから、だって超いいもん、バカだと思うよ、あんな曲書けるのに田舎帰るの、って言ったら……「もうちょっとやってみます」って翌日来て、で、結果ですね、僕らと一緒に対バンとかをやってたら、僕らを観にきたレコード会社の人たちが「なに、あの子たち」っていう風になって、同じレコード会社・事務所で、デビューすることになったっていう。
それで自由になったのかい('71年・中津川フォークジャンボリーより)/岡林信康
山口 隆)これが、'71年の中津川フォークジャンボリーの音源で、バックがはっぴいえんどと、ピアノが柳田ヒロさんだっと思うんですけど、岡林さん本人に聞いたことあるんですよ。
綾小路翔)ええ。
山口 隆)ほんとかっこいいんで。でも、ロックを始めたってことで、戸惑うかたもいらっしゃったみたいで、僕が思ってるような、やんややんやの、すべてがイエスっていうわけじゃなかったそうなんですよね。だからこれは先輩という意味でも、稀代の、日本のロックの創始者ですから、僕なんかはほんとに大尊敬してて、対バンつったらおこがましいんですけど、一緒にやらせてもらったこともあったりして、まあなんていうかな、偉大なるオリジネイター、尊敬してるかたでございます。
ルーレット/真島昌利
綾小路翔)これは僕、それこそ、この曲かけたらもういいやって思うくらいの名曲で。またマーシーって、1曲が全部映画みたいで。ほんとに、詩人なんですよね、とにかく。
山口 隆)あんまりね、こういう言葉使うのも、逆にあれかもしれませんけど、まあ、天才っていうとしたらああいう人なんだろうなって。
綾小路翔)ほんものの天才ですよね。
山口 隆)だって、「青空」って26の時とかでしょ、たぶん、書いたの。
綾小路翔)すごいすねえ。だって「アンダルシアに憧れて」は、たぶんハタチくらいで書いてますからね。
山口 隆)いやー、あれは、あの、ブレイカーズ……?
綾小路翔)ブレイカーズのときに、書いてるんですよね。
山口 隆)ブレイカーズっていうのは、あの、ブルーハーツを組む前に、真島さんが組んでた、ロッケンロールのね、(歌う)C'mon, C'mon, C'mon……。
綾小路翔)ものすごいカッコいい。
山口 隆)超かっこいい。
綾小路翔)超お洒落で。
山口 隆)そういう意味では、ブルーハーツっていうのは、ドリームバンドで。
綾小路翔)最初のベーシストは、コレクターズの加藤ひさしさんが誘われてたってゆうね。
山口 隆) THE BIKEの。
綾小路翔)THE BIKEのボーカルの。
   ★   ★   ★
山口 隆)そしてこの「ルーレット」。
綾小路翔)ほんとに言葉を持ってる人だなっていう。メロディーも最高なんですけど、なんだろう、この人の言葉のセンスっていうか。
山口 隆)すごいですよね。
綾小路翔)あの、中1の夏前に出たあのアルバム、僕、中1の夏休みからずぅっっと聴いてますね、『夏のぬけがら』っていう伝説的なファーストアルバム。ソロのね。
山口 隆)だから、この真島さんて人は、いったい何者なんだろうって思うことありますよ。キース・リチャーズとボブ・ディランが一緒になったみたいな。
綾小路翔)そういうことですよね。
山口 隆)詞もすごいし、歌も上手いでしょ。
綾小路翔)そうなんですよね、この声が。
山口 隆)そうなんですよ、だから、キース・リチャーズと、ボブ・ディランと、あと、それこそ、ジョン・レノンとか、そういう人が一緒になったみたいな。ちょっとおそろしい人なんですよね、このかたは。

4 week talking

4 week talking

山口 隆)どこまで本気でどこまで冗談なんだろうみたいな。ま、ロックはね、いろいろ立ち位置がありますから、どこまでこいつら、真面目なのか遊びなのかみたいな……僕らなんか、どれだけ真面目にやったって、どうせ遊んでんだろうみたいに思われたりとか(笑)ありますけども。氣志團も、最初に、こう出てきたときは、その境目がわからないところが良かったっていうか。
綾小路翔)そうなんですよ。あの、やっぱり、基本的にはシャレでいいと思ってて。みんなが、「もう、あいつらふざけてるんだろう」って。我々自身もふざけてるんで、どこかで。だけどその分、音楽だけはちゃんとやっとかなきゃってゆうことのバランスだと思っていて。
山口 隆)はいはいはい。
綾小路翔)だけどあるときから、だんだん、音楽を認められたいという意識が強くなってきて。
山口 隆)おー、もちろんそうでしょ。
綾小路翔)そこのね、マジ度が高くなってから、ちょっとね、面白くなくなったなあっていうところがあって。
山口 隆)そうですか。
綾小路翔)ええ。やっぱ、マジなんだっていうのは、自分たちのなかだけで持ってればいいもので、ひとにアピールすることじゃないよねっていう。そこだったんですよね。どっちも……本気の気持ちもあるんだけど、それを、こう……シャレのように言うっていうこともあるし、シャレみたいなことを本気で言うっていう、なんて説明していいかわかんないんですけども。
山口 隆)僕らも出てきたとき、やっぱ真面目な……そりゃそうですよね、基本的には真面目ななんだけど……なんか面白いこと言いたくなっちゃうっていうのはあるんですよね。よくある、ゴレンジャーとかサンバルカンとか、黄色……イエローに目がいっちゃうっていうか、毎回カレー食べてる、あ、こいつは楽しいやつだと。ね、『ふぞろいの林檎たち』における柳沢慎吾さんのところに、やっぱり目がいっちゃうというかね。
綾小路翔)それはあると思います。三枚目……いや、もしかしたら三枚目でもないのかもしれない。三・五枚目くらいの人たちっていうのは、僕もいつも気になるし、やっぱり男って、土壇場でユーモア出せるかどうかが、たぶんいちばんの……僕らの好きだった先輩っていうのは、全然かっこよくないし、喧嘩が強いわけでもないんですけど、(仲間の)誰かが怖い人にからまれたりしたときに繰り出すユーモアが絶妙で、ものすごい怖い人たちに追い込まれてるのに「名前、何だ?」って言われて、「オズマです」って名乗った先輩いたんですけども。
山口 隆)あっはっはっは。
綾小路翔)たぶん、昼めしどきに見た『巨人の星』のアームストロング・オズマから、ただ言っただけなのかも。でもあの時点で、最強なのはこの人なんじゃないかっていう。
山口 隆)なんていうかな、情けない奴っているじゃないですか。女の子から見たら「なんなのこの人、変な人」なんだけど、男から見たら大ヒーローみたいな奴って必ずいるじゃないですか。
綾小路翔)はい。
山口 隆)もう、そういう人に憧れて仕様がなかった。やっぱりそういう奴と仲良くなりたがるんですよね。そういう奴っていっつも変なことばかりやってるんですよ。ひとりで「俺はクイズ研究会をつくりたい」とか、訳わかんない。で、女の子から訳わかんないと言われてるんですけど、メインストリームにいる奴も、「お前、今日なにやってんの」って、そういうユーモアのある奴にけっこう惹かれてたっていう。
綾小路翔)ぼくらもほんとそうで。バカやってる先輩に、いつも心惹かれるところがあって。
山口 隆)あれ、男、独特なんですかね。ああいうのって。
綾小路翔)そういうところに強さを感じるっていうか。自分のなかの乙女が騒ぐのもそういう人で。ああいう人のほうが一緒に生きてて楽しいだろうな、っていう。なんか、もしかして、いきなり会社クビになっても、こういう人だったら面白おかしく家族盛り上げてくれるのかな、とか。
山口 隆)あの、あれはどうでした、少年時代に、僕は福島で、小学校4,5年くらいになって、『オレたちひょうきん族』っていうのが始まったときに、ほんとに革命的な衝撃を受けたんです。これは何なんだって思ったんですね。
綾小路翔)僕は低学年でしたかね、むしろ、ドリフよりもすぐに『ひょうきん族』に夢中になって。
山口 隆)あ、やっぱり『ひょうきん族』いきました?
綾小路翔)『ひょうきん族』派でしたね。
山口 隆)びっくりしませんでした? 僕は土曜日大好きなんですけど、土曜日の原点ってあそこなんですよ。で、僕にとっての土曜日は、救いで、お洒落で、僕を助けてくれるものだったんですよね。
綾小路翔)うんうん。
山口 隆)それはあの『ひょうきん族』だったんですよ。なんて洒落てんだと思ったんですよ。言葉の才能と斬新なものの造り……いまでも再放送なんか見ますけど、たけしさんの早口、びっくりしますよね。
綾小路翔)ははははは。
山口 隆)あの当時、これでやったのかって……。(『オレたちひょうきん族』は)最初見たときから、超衝撃でした?
綾小路翔)それまでサンバルカンとかデンジマンとかダイナマンに夢中だったのが、初めて見る、おかしなヒーローがタケちゃんマンで。
山口 隆)いやー、ほんとですよね。
綾小路翔)「強きを助け、弱きをくじく」っていう……なんて奴だと。
山口 隆)あれの意味、わかりました? 「今日は吉原、堀之内……」
綾小路翔)あれは、わからなかったです。
山口 隆)「……中洲、すすき野、ニューヨーク」あれはすごいですよね。
綾小路翔)これをゴールデンの番組で、子供たちの見る8時台に……。すごいなあと思いましたけど。大人たちはどう思ってあれを見てたのか、子供たちはそんなの気にせず一緒に歌ってたんですよね。
   ★   ★   ★
綾小路翔)ブラックだったんですよね。あんな、メインストリームでやりながら。
山口 隆)あと、何言ってるかわからないけど面白い、っていうのがありました。和田アキ子さんとタケちゃんマンが対決するっていう回がありまして、和田アキ子さんの光線がホリプロなんとかビームっていうんですよ。当時、ホリプロとか全然知らないけど、なんかがここで起こってんだなっていうのはわかったんですよね。
綾小路翔)全然、実は子供に一切向けてないんですよね。実際は、自分たち(送り手の)世代とか、もうちょっと若者に対して(とかで)。逆に年上にもぶつけてないんですけど、みんな全世代が夢中になっちゃったっていうところはあって、なので僕らも、実は子供向けなことは一切やったことはなくて。
山口 隆)うんうんうんうん。
綾小路翔)だけどなぜかお子さんたちは、そういうもののほうが食いついてくるっていう。
山口 隆)だから僕、氣志團が洒落てるって思ったのって、たぶんそういうのがバックボーンとしてあると思うんですよ。なにかヒップなこととユーモアがひとつになってるのって、やっぱりあると思うんですよね。
綾小路翔)そういうのってあったと思うし、あそこでなにか、謎のスターたちがどんどん発掘されてったっていうようなところがあったので……。
山口 隆)あのときって、お気に入りのかたっていらっしゃったんですか?

綾小路翔)やっぱりなんだかんだ言いながら、たけしとさんまの構図っていうのが何よりも面白かったんですよね。
山口 隆)そうですよね。
綾小路翔)あとは、単純に片岡鶴太郎さんが……。
山口 隆)くっくっくっく。
綾小路翔)俺たちが観てても……それこそ、W近藤の物真似? 近藤真彦さんと、近藤正臣さんの物真似っていうのが……。
山口 隆)(笑)あの、ひょうきんマッチっていうのがね、いま思い出しても笑っちゃいますよね。
綾小路翔)あの、「マッチで〜す!」っていうの、マッチ(近藤真彦本人)は言ったことないんじゃないかっていう。いまだに僕ら、乾杯のかけ声は「マッチで〜す」ですからね。
山口 隆)そうなんですか。僕ら、浦辺粂子さんて誰だかわかんなかった。
綾小路翔)そう、そうなんです。でも「うらべくめこですよ〜」なんつったら、もう、面白かったですよ、ええ。
山口 隆)そうですよね。なんなんでしょうか、あれは。
綾小路翔)そうなんです。近藤正臣さんのことも、僕ら知らなかったです。
山口 隆)知らなかったです。
綾小路翔)「コンドーです!」っていって、髪の毛バチャンてやるんですけど。全然知らないけど、面白かったんですよ。
山口 隆)面白い。やっぱりなんなんでしょう。僕らにとってユーモア……ユーモアって言っていいのか、ああいうものってすごかったですよね。
綾小路翔)すごいなーと思って。なぁんか、全然置いてってんです、実は世の中のこと。だけどみんなが、なんか追いつきたくて。
山口 隆)そうそう、そうでした。
綾小路翔)あの感じがかっこよかったんですよね。
山口 隆)置いてくぞ、って感じでしたよね。
綾小路翔)勝手に自分たちで盛り上がってっちゃうっていう。
山口 隆)(笑)そうですね。でも最後に、すごい洒落た音楽が流れるんです。
綾小路翔)EPOが流れたり。
山口 隆)そうなんですよ! あの、「土曜の夜はパラダイス」ってね。あれは……俺、だから、東京ってすげえ、って思ったんですよね。
綾小路翔)あのアーバン感て半端なかったですよね。エンディングテーマの。

綾小路翔)('90年代に関して)えっと、その頃、まだ音楽番組もいっぱいあって、『HEY! HEY! HEY!』が始まって、天下のダウンタウンが音楽番組を始めると。だからいろんなアーティストたちが命がけで、そこで何か爪痕を残さなきゃいけないっていって、ええ、トークの部分でみんな気合い入れて行く、みたいな。
山口 隆)氣志團は何年にあそこに出るんですか? 『HEY! HEY! HEY!』に。
綾小路翔)僕らは遅いです。2006年くらいまで出てないです。
山口 隆)あ。そうなんですね。
綾小路翔)それこそ、'90年代にあそこに出て、みんなミリオンヒットを連発していくようなスターたちが現れるわけで、ま、みんな勘違いして、『HEY! HEY! HEY!』に出れたら売れると。
山口 隆)(笑)。
綾小路翔)思っていたんで、みんな出たがっていたと思うんですよ。そんななかで、僕ら2001年にデビューして、僕らは音楽番組に出ないようにしようって思っていて。
山口 隆)ああー、そうなんですね。
綾小路翔)固い番組以外出ないって決めたんですよね。
山口 隆)僕は覚えてますよ。氣志團が、僕のなかでのヒップ登竜門……それは、NHK教育の土曜の夜——これもまた土曜なんです——土曜の夜10時枠ってあるんです。これは古くは1980年代は『YOU』、僕は忘れられないんです、あの『YOU』っていう番組が。で、その枠に氣志團が出たんですよ。
綾小路翔)あれは『トップランナー』ですかね。
山口 隆)それで、ああ、氣志團て、やっぱりそういうグループなんだって思ったんですね。やっぱ、こう、ちょっとクレバーで、ヒップなグループなんだなと。
綾小路翔)自分たち的には、じわじわと知ってもらえてる、浸透してきてるのかなと思ってたんですけど、全然そんないわゆるポピュラリティのある人間ではまったくなかったので、ただ、けっこうそういう、人を引っ張るっていうような、世間的に誰もが知ってる人じゃないけど、実はこの世界でこんなにすごいことやってる奴がいるっていうのを目的とした番組だったので、だからなんか僕らも、最初はいろいろそうやってテレビを制限してたんですけど、でも、それはやっぱり、我々のキャラクター的に、こういうのが露出しすぎると、すぐに飽きられちゃうだろうっていう不安もあったので。
山口 隆)音があったでしょう。音が革新——僕がいうのもえらそうですけど——音が新しかったでしょう。
綾小路翔)いやー、我々は古いなあと思ってました。自分たちで。
山口 隆)あそこの引き出し、出してくるのは新しいと思わなかったんですか?
綾小路翔)やってることは基本的にオマージュが多くて。世の中に、個人的には、もう新しい音楽いらないやって思ってる子供だったんですよ。もう充分、死ぬまで聴ける局が充分あるって思っていて。それなのに、こういう人間が表に出て行くってのは、おこがましいなあと思っていて。
山口 隆)へえー。
綾小路翔)だけど、東京来てわかったのが、東京来たら、すごい音楽詳しい人とかマニアックな人とか話の合う人とかいっぱいいたんですけど、実は僕らの愛していた音楽が、ポピュラリティのある音楽ではなかったことに気がついたんですよ。
山口 隆)はははは。
綾小路翔)俺、世界中で俺たちの聴いてる曲、みんな知ってんのかと思ってたんですけど、実はそうでもないっていう。
山口 隆)ははははは。わかるなあ。
綾小路翔)僕、世の中の人が全員、「GET THE GLORY」歌えるって思ってたんですよ。

on air楽曲

テーマ「本気と冗談(マジとシャレ)」
PTA〜光のネットワーク/UNICORN
山口 隆)それ、なんですか、それ(笑)。最近の(UNICORNの)やつですか?
綾小路翔)いや、これ、大昔ので。あのー、TM NETWORKをパロってる曲なんですよ。
山口 隆)(笑)。
綾小路翔)これ、当時、衝撃で。同時代の人気者同士なんですけど、それを……。巧いなあっていう。メロディーの感じとか音の作り方とかも、完全にTM NETWORKをパロってるんですけど、でもいい曲なんですよ、すごく。
山口 隆)へえー。
綾小路翔)ほんとに、TM NETWORKにありそうな曲なんですよ。やっぱりセンスというか、本物はこういうことをしても面白いんだなあと思ったし、だから『ひょうきん族』とかもそうだったんですけど、楽曲よかったじゃないですか、タケちゃんマンの曲も、あの、マイナーから突然メジャーに変わるとことか。
山口 隆)アミダばばあの。あれもいい曲ですよ。
綾小路翔)アミダばばあの、桑田(佳祐)さんが作ってたりとか。あと、「ホタテのロックンロール」とか。
山口 隆)かっこいいよね。
綾小路翔)その、本物たちがやるパロディーっていうのが、洒落が効いてて面白いなーって思っちゃって。なんか、このパロディー精神が、とことんここまでやってるから、もうすごいなっていう。
JODAN JODAN/海援隊

綾小路翔)これも、同時期に「Y.M.C.A.」があって。
山口 隆)(笑)。
綾小路翔)西城秀樹さんの「Y.M.C.A.(ヤングマン)」をパロって、「J.O.D.A.N!」と。だけどこれもいい曲なんですよ。歌詞もよくできてて。
山口 隆)「ジョーダン、ジョーダン、ジョーダン〜」(歌う)
綾小路翔)そう。いま聞くとすごい社会風刺で。こないだ、たまたまそういう話になって、YOU TUBE見てたら、こんときの格好がまた最高で、裸の上に革ジャンで、お守りぶら下げてる武田鉄矢が歌うわけですよ。
山口 隆)はっはっは。
綾小路翔)(笑)どうゆうセンスなんだっていう。

欲望(シングル・バージョン)/阿部義晴
山口 隆)僕も結局、UNICORNの関連になっちゃうんですけど、阿部義晴さん。そのユーモアのかたが、ひとたび、心のなかをパカッと取り出すと、ここまで深くいとおしいラブソングを書けてしまうという。
綾小路翔)いやー、これは稀代の名曲だと思いますけどね。
山口 隆)やりやがったなと思って。
綾小路翔)ははははは。
山口 隆)こんないい曲。僕、日本のロックも、海外のロックも好きな理由って、日本のロックがダメだったら海外(が良い)って言いますけど、もうこんな曲あったら、日本のロック、ダメとは絶対言わないっていうか。ま、そういう名曲でございます。
悩んで学んで/奥田民生
山口 隆)これも、何回も何回も聴きましたね。なんかこう、18,9になると、女性の、その、大人の感じが、許容量超えてしまって、もう大人の悩みになってきて、ちょっともうショックだと。それを、民生さんのこの曲が歌ってくれたと。それを民生さんに言ったら、「あの歌出したら、お前みたいなのがいっぱい来た」って言ってましたね(笑)。

5 week talking

5 week talking

山口 隆)どうでしょう、翔さんと共通する部分があるとすれば、「女性の存在」っていうのは、仰ぎ見るじゃないですけど、遠くから見る憧れの存在——『思えば遠くへ来たもんだ』でいうところのあべ静江さんであったり、『男はつらいよ』のマドンナ役であったりとか——そういうことでよろしゅうございますか?
綾小路翔)そうですね、やっぱり女性はすべてのあこがれの最上級の存在というか、やっぱりですね、女の子が世の中からいなくなったら、即みずから命を絶つ自信がありますね。
山口 隆)(笑)やっぱりですね、僕なんか、なかなか女の子と話せない……翔さんはけっこう話せるタイプではありました?
綾小路翔)僕は、自分から話しかけることはできないんですよ。これはもう男女問わずで。
山口 隆)なるほどなるほど。
綾小路翔)だけどものすごい興味を持ってるわけですよ。女の子にモテたい! とか、常に思っていて。なので、話しかけてもらえるように、常に目立つ行動を取ってみたりとか奇抜なファッションをしてみたりとか、バンドを始めてみたりとか、そういうことで、みんなに声かけてもらえないかなというのは、あったと思います。いまも常にあります。はい。
山口 隆)僕、自分が思ってる世界とたぶん女性が思ってる世界が違う、全然違うもんだってことにも気づかなかったんですよね、中学・高校の頃なんていうのは。つまり、ほんとにバカヤローだったわけですけれども、僕のなかでは、ビートたけしがいて、パンクがあってみたいな世界じゃないですか。女性にそれを、100パーセントわかってもらえると思っていたわけですよ。現実としてそうじゃなく、別なタイプのかたがすごくモテるって現実があるじゃないですか。あれ、なんでか知らないけど、いつかそういう、Someday Prince will Comeじゃないですけど。
綾小路翔)(笑)
山口 隆)なんかわかってくれる人が出てくんじゃねえかと思ってたんですよね。でもなんか、なかなかそれは出てこないと。その辺、どうでした?
綾小路翔)僕のなかでは、ほんとにその辺は軽薄というか軟派というか、僕、その人と仲良くなれるんだったら、自分のこだわりとか自分のプライドとか一切捨てられるタイプで。
山口 隆)あ、素晴らしいですねえ(笑)。
綾小路翔)ええ。自分の好きなものは自分の好きなもので取っておこうと。
山口 隆)なるほど。
綾小路翔)なので、中学生のときに気になる女の子がいて、彼女がBUCK-TICKのファンであるという情報を耳にしたので、ファンであるってことはもう何でも持ってるだろうと思って、とにかく僕、BUCK-TICKを彼女と喋れるくらいの博士になろうと思って、とことん研究するわけですよ。
山口 隆)はいはいはいはい。
綾小路翔)そうこうしているあいだに気づいたことがあって、たぶん、田舎の中坊くらいじゃ持ってないであろう、彼らがデビュー前に太陽レコードというところから出していた「TO-SEARCH」というEPが存在すると。
山口 隆)ほえー(笑)。
綾小路翔)これがもう、その頃ですでに1万5千円くらいのプレミアがついちゃってて。で、それをですね……僕、新聞配達とかやってたんで、勤労中学生でお金持ってたんですよ。
山口 隆)完璧ですね翔さん、それ。それでそれで?
綾小路翔)で、「宝島」に載ってるいろんな中古レコード屋さんに片っぱしから電話して、TO-SEARCHないのかと言ったら、あって。やっぱり1万5千円くらいなんですけど、通信販売で購入して。で、まあとにかく机の前に、いつも置いておいたんですよ。
山口 隆)やっはっはっはっは。
綾小路翔)そしたらついにですね、無口なその女の子が、「これって……」って話しかけてきてくれて。
山口 隆)来た!
綾小路翔)あ、BUCK-TICK好きなのぉ? って、知ってるくせに。持ってる? なんて言ったら、「いや、持ってないんだよね」って。よかったら貸すよって言ったら、「いや、うち、レコード聞けないから」。あ、だったら、俺、テープに録ってくるよ、って言って、テープに落として、残りに自分の想いを伝える楽曲をぶわーっと入れて。
山口 隆)わー、わかるなー。
綾小路翔)勝手なライナーノーツも入れて。
山口 隆)わかるわー。
綾小路翔)残念ながら、ほかの楽曲に関しては何の反応もなかったですけど(笑)でも実は彼女はすごくよく聴いてくれてたみたいで、だけど、向こうは無口な、クールなタイプだったんで、「ありがと」の一言しかなかったですけど、その後、結果、おつきあいできるようになって。
山口 隆)おお! 翔さんは、だからそこがすごいですよね。
綾小路翔)とにかく、そのあとも、執拗な行動というか。現在ではこれは危険な感じなんですけど、ま、彼女が歯医者に通ってるという情報を耳にしたので、市内の我々の行動範囲にある歯医者なんてせいぜい3軒から4軒なので、まず予約をしに行って、すみません、どこ空いてますかね? って言って、予約帳を見ると、彼女の苗字がすこし珍しいタイプだったんで、ようやく3軒めぐらいで発見して。
山口 隆)細かい(笑)。
綾小路翔)ええ、その30分後に自分も予約を入れるという。
山口 隆)(笑)。
綾小路翔)で、偶然を数回装うと。毎回彼女が出てくると、たぶん内容は全然入ってきてないんですけど、ま、サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』とかを、こう。
山口 隆)(笑)サリンジャー、ひゃっはははは。
綾小路翔)で、彼女が出てきて、あ、どうもーみたいな。
山口 隆)俺、サリンジャー読んでんだぜ、みたいな(笑)。だからそれがまた、いとおしいとこですね。
綾小路翔)キモいです(笑)。
山口 隆)彼女、サリンジャーどうでした?
綾小路翔)まったくそこには興味持ってなかったですね(笑)。
山口 隆)(笑)そうなんですよね。あれはね、僕らのね、ダメなとこなんですよ。なんか自分たちがいいと思ってる世界は、世界中通用すると思っちゃってるところがあるんですよね。
綾小路翔)そうなんですよね。なんか背伸びばっかりしてたんで。

山口 隆)あれはどうでした? 東京に行ったときの、黒船感たら、なかったていうか。
綾小路翔)そうすねー。
山口 隆)普通に女の子が、革ジャン着てライブハウスの前にいる! みたいな。なんだろう、自分の中では6万人にひとりとか、7万人にひとりとか、トップクラスの、そんな子が50人くらい、ずらりとライブハウスの前にいたという衝撃。
綾小路翔)当時、パンクのライブとかに来てるハードコアの女の子たちとか、かわいい子が多かったんですよ。僕、けっこうその、パンク萌えみたいなのがあって。
山口 隆)パンク萌え(笑)。
綾小路翔)パンクガールに惹かれるっていうヘキ(癖)はあったんですね、かつて。
山口 隆)いまはないすか?
綾小路翔)最近は、パンクガール自体が、ほぼほぼいないので、いまはアパレル萌えですかね。
山口 隆)(笑)。
綾小路翔)(笑)。
山口 隆)これはちょっと説明がいると思うんですけど(笑)。
綾小路翔)たとえば中学生のときに、自分はヤンキー好きじゃないんですよ、ヤンキーの女の子は好きなわけじゃないんです。ただ、性的にはその、ヤンキーの先輩にものすごく興奮するタイプで。
山口 隆)(笑)。
綾小路翔)ヤンキーの先輩って、もう生態がわからなくて。なんていうんすかね、その……「一軍感」?
山口 隆)一軍感(笑)。
綾小路翔)一軍だなーアレ、と思ってて、もしかしたらファッションだけじゃなくて、その、一軍に憧れる……自分はあんまり一軍じゃないんで。学校のトップみたいな人たちに憧れるところがあって。パンクのおねえさんも、パンクの世界のトップにいるようなカッコいいおねえさんたちに対して興奮するヘキがあって。なんか自分が渦中にいながらも、ほんとの生態を知らないひとたちに対するミステリアス感みたいなもので……。
山口 隆)革ジャン・スカジャン萌えってありました?
綾小路翔)ありましたね。革ジャンで、しかもモヘアセーターとか着てる女の子が、どんな下着をお召しになられているのか。
山口 隆)お召しになられて(笑)。
綾小路翔)ええ、実は、そこに決して、God Save The Queenのね、(パンクの代名詞みたいな)柄は描いてないんじゃないか、実はパンツはもっとかわいいの、はいてんじゃないかとか。
山口 隆)さすがですね、そこまで!
綾小路翔)そういう、もう完全に性的に憧れを持つ、っていうとこはありましたね。
山口 隆)つまり、革ジャン・スカジャン萌えなわけですよね。つまり僕なんか、その、で……。
綾小路翔)Dr. Martin萌えですね。
山口 隆)ぐあー、なるほど!
綾小路翔)これはね、いまもあります。いまも、「Dr. Martinはいてる女の子の八割以上は美人だ」っていう。
山口 隆)なるほど。もうだからスキンズバンドのライブなんか来たら、もう間違いないですね。
綾小路翔)で、スキンズまで行っちゃうと、ほんとにスキンヘッド・ガールとかになっちゃうと、ちょっとだけ、少し引くってとこはあるんですけど(笑)。
山口 隆)(笑)。
綾小路翔)だからああゆうのも、かわいくないとできないんで。
山口 隆)ま、そうなんですよね。

綾小路翔)自信を持ってないと、ああゆうファッションはできないですよね。おのれに。
山口 隆)なるほど。だから僕、上京したときね、右も左もわかりませんから、とにかく原宿ってどんなとこだっていって原宿行った、したらローラー族のかたがいらっしゃって……ローラー族、ロックンローラー族? なんてお呼びしたらよいか……。
綾小路翔)東京ロカビリークラブのかたがたですね。
山口 隆)その、女性のかたが、リーゼントして、ラジカセでロックンロール流して、ジーン・ビンセントかなんか流して、踊ってたんですよ。革ジャン着て。……いやぁー、ヒモにしてくんねえかなあと、ほんっとに思いましたよね。
綾小路翔)(笑)ええ、当時、ロカビリーの世界とかもそうで、ロカビリー、サイコビリーのライブ行くと、彼女さんたちなのかもしんないんですけど、不良の彼女たちってみんな綺麗なんですよ。
山口 隆)なるほどなるほどなるほど。
綾小路翔)だからパンクもそうだったんでしょうね。ヤンキーもそうです、不良の彼女たち、みんなかわいいなと思ってて。で、なんかその、不良の質は違うんでしょうけど、その、アパレルとかもまた別のタイプの不良なんですよね。
山口 隆)そうですよね、とんがってる……。
綾小路翔)とんがってる人たちで。で、その人たちのまわりにいる女の子、みんなかわいいんですよ。で、現在は、そのビッチ感よりも、なんていうんですか、ああいうモード系の服装とかをしてたりして、「夏になってそれなりに露出はあるんだけど、絶対に下着が見えない女性たち」っていうのが、僕の思うモード系アパレルの人たちで。なんかね、清潔感があるんです。ああいう人こそが、ほんとはスケベを隠してるんじゃないかっていう妄想ですよね。このトシにもなって。

山口 隆)いま、こうやってメジャーのこんなありがたい空間でやらしてもらっている、そうしますと、とんでもないお綺麗なかたが……そりゃ街ゆく人も綺麗なんですよ、綺麗なんですけど、まあとんでもない綺麗なかたが、ぐわーっているじゃないですか。混乱しませんか?
綾小路翔)僕、意外と、実はそこじゃないんだなーっていう。やっぱり、動物園に行って、うわーライオンだ、うわーヒョウだ、ゾウでけえ、キリン背高えみたいなことで興奮はするんですけど、でもおうちで飼いたいとは思わないみたいなところあったんで。
山口 隆)ふわっはっはっは。
綾小路翔)それは動物園で見れるからいいや、みたいな感じに最終的にはなっていきましたね。
山口 隆)ほおー。
綾小路翔)もちろん子供のころは、ああゆう女の子とつきあいたいって思ってたんですけど、その後、仲良くなったりとかもあって。
山口 隆)うーん!
綾小路翔)で、思ったことは……欲を持つとほんとに自分がつまんない人間になるんですよ。
山口 隆)ははははは。
綾小路翔)ほんとにこればっかりは。男女に限らずで。すっごい憧れの先輩に出会えたと思ったときに、この人に好かれたい! と思うと、全然面白いこと出てこないんですよ。
山口 隆)なるほど!
綾小路翔)なんかもうちょっと、いい加減な気持ちで、全然そこに欲望がないと、いっくらでも面白いこと言えるんですけど、そうすると好かれるんですよ!
山口 隆)なるほどねー。
綾小路翔)だから不思議なもんだと思いますけど。だから美人も……よくみんなで話すんです。よくテレビ見てね、なんだよあのブスとか、こいつ勘違いだよねとか言ってたけど、そんなことはないよね、と。よく一般の子が「あの子かわいくなーい」とか言うけど、それを聞きながらも、ん? そんなことはない、と。
山口 隆)くくくくっ、かっかっか(笑)。
綾小路翔)好み、好みじゃないは、あるかもしれない。けど、俺たち、芸能人の女の子がちらっとやってきたら……ことわる理由はないよね、と。
山口 隆)かっかっかっ(笑)やっぱりね、なんて言いますかね、僕は、よく分かりませんけど、その芸能のかたっていうのは、前に出るということで商売なさってる、つまり翔さんがそこの門に入っていくってことは、なかなかの大海原に行かなきゃいかないっていう、このリスクもあるということですよね?
綾小路翔)ものすごいリスキーでしたし……だから、最近はあれですもんね、もう、これはやっぱり経験でわかりましたから、とりあえず事務所名を見て……。
山口 隆)ははははは。
綾小路翔)ここには一切話しかけないとかね。
山口 隆)そういうとこ、リサーチ力で。
綾小路翔)ええ、ちゃんとしますし、基本的に僕、いま、いろいろそれで経験して、「いつか、絶対に芸能人と結婚するんだ」とか思ってましたけど、単純に、僕には向いてないっていうことがわかったんです。
山口 隆)(笑)いまは、ちょうど庵を結んで、ね。
綾小路翔)そうです、いまは、ノーモア芸能人。
山口 隆)(笑)。
綾小路翔)よく、お美しいかたがたを見て、天は二物を与えたと。歌が上手くて、ルックスがよくて、スタイルがよくてとか、トークができてとか、役者もできてとかっていう……でも、実は「天はすべての人たちに平等に与えている」と僕は思っていて。
山口 隆)なるほど。
綾小路翔)あの子たちは、みんなが憧れるものを多く持っているだけで、残り……やっぱり、その分、どこか欠落しちゃってるんですよ。どうしても。
山口 隆)まあまあまあ、仏教でいうところの、世の中のものは増えもせず減りもしない、みたいな。なるほど。
綾小路翔)まさにそのとおりで、ひとそれぞれ、みんなそうで、だから僕は自分にとってバランスのいい人を好きになってるだけで。たとえば、みんなが持ってる項目が6項目で5まであるとして……。
山口 隆)性格。美人……。
綾小路翔)ルックス……。
山口 隆)健康、人のこと思いやれるか、とかそういういろんな項目が。
綾小路翔)家庭的であるとか。
山口 隆)なるほど。
綾小路翔)そういうのも含めていくと、みんな持ってる数値は一緒なので——ま、なかには飛び越えちゃってる人もいるのかしれないですけど——自分が女性に求めるものは、そっちに三つ持っちゃってる人たちは、こっちがどうしても三つ足りないんですよね。
山口 隆)なるほど。
綾小路翔)もちろん感じもいいですし、良い子は良い子ですし……ま、ほんとのパッパラパーはパッパラパーですしね。
山口 隆)はっはっは。
綾小路翔)でもパッパラパーだから、テレビとかで、ものすごいちからを発揮できたりするんですよね。
山口 隆)あー、なるほど!
綾小路翔)そこに対して、すごく相手を思いやるちからばっかり持ってると、それはテレビの、生き馬の目を抜く世界で、能力を発揮できないんですよね。
山口 隆)150キロの球を投げたときに、これをよけるんじゃなくて、これを打ち返すと。なるほどね。
綾小路翔)そこにちから持ってると、ほかにはどうしても数、足りなくなってきちゃうんで。だからそれを愛すかどうかなんですよね。そういう子を愛すかどうか。
山口 隆)んあー、なるほどー。
綾小路翔)でも、結局、僕らの同世代くらいになってくると——仲の良い友達たちはいますから——そういう女の子たちも、あの頃、黄金の絶頂期を迎えてた子たちも、やっぱり、必ず失われていくものなんですよね、その、「美」だとかっていうものは。
山口 隆)うんうんうん。
綾小路翔)だからそうなってくると、あれだけ仕事あったものが、いまなくなっちゃったとか。
山口 隆)なるほどなるほど。
綾小路翔)かわいい子はどんどんあとから来るから。
山口 隆)んー。
綾小路翔)でもその子たちのなかでも成功してる子たちは、やっぱりそれだけじゃなかった子たちで。ちゃんと人とのコミュニケーション能力があるとか、その頃は目立たなかったけど、すごいそこを培ってきてるから、いまになって評価されて、売れっ子になってる子たちもいるし。

on air楽曲

テーマ「“女性”という存在」
涙のキッス/サザンオールスターズ
山口 隆)この曲は、中学校3年か高校1年かくらいなんですよ。まあ、まわりの女の子がみんな聴いてて、これを歌えば、モテんじゃないかなと思わせる魔力がありました。
綾小路翔)それはありましたね。
山口 隆)サザンオールスターズなんて、みんないい曲のトップクラスみたいなのばっかじゃないですか。特にね、「涙のキッス」はね、そういう気持ちがございました。
Bye For Now/T-BOLAN
綾小路翔)あの曲を歌えばモテるんじゃないかっていうのは、僕らの高校生時代だと、それを思った全員が歌ってて、逆に女の子、嫌がっちゃったっていうのが、T-BOLANですね。
山口 隆)あー! あー!
綾小路翔)そのなかでも何か……「離したくはない」っていうのもいいんですけど、「Bye For Now」ですね。
山口 隆)あー、これは!
綾小路翔)これは、もう「素敵な別れさ」っていうね、ものすごい、殺しの名文句からスタートするんですけど。
山口 隆)これはもう、'90年代という時代を、完璧につかみ取ったみたいなね。
綾小路翔)もうね、地元の同級生は全員が「T-BOLANを巧く歌えたら女にモテるんだ」って、本気で思ってて。(カラオケで)ずっと「離したくはない」「Bye For Now」「マリア」って、どんどん入れ続けるっていう現象が起きてて。
山口 隆)ひゃっひゃっひゃ。
綾小路翔)女の子が、逆にちょっと、わかるけどちょっとっていう。この浅ましさが伝わりすぎちゃったっていう(笑)。
山口 隆)そんなくらいすごかったですもんね、T-BOLAN。
綾小路翔)それがあって、ついに今年、《氣志團万博》に、T-BOLANの森友さんとお呼びして。
山口 隆)素晴らしい!
綾小路翔)本物を見ろ、と。
山口 隆)ね、これが、そうだと。
綾小路翔)これがモテる人。お前ら、違うから! っていう(笑)そういうことをね、実現するに至ったんですけど。
TRAIN-TRAIN/THE BLUE HEARTS
山口 隆)これはね、「弱い者たちが夕暮れ」っていうくだりに、なんか周りに相容れない、つまり女の子とも上手く喋れない自分……で、その(笑)こわい人たちがね、女の子をみんな彼女にしていく、ね。で、二番手くらいのこわい人たちが僕らのとこに来てなんか言う……ほんとに「さらに弱い者を叩く」みたいな。だけど自分たちはそれによって、ますますこう、あー、それでも! って、さらに「ブルースは加速していく」みたいなことを青春時代に強く思わせてくれた、そういう曲でございます。
YATTA!/はっぱ隊
綾小路翔)たしかに「TRAIN-TRAIN」いいなーって思いますね。自分たちを鼓舞する曲。
山口 隆)そうなんですよ。
綾小路翔)だとしたら、僕はですね、はっぱ隊の「YATTA!」という曲をですね……。
山口 隆)ああー!
綾小路翔)僕ね、最終的にやっぱり強い男は、ほんとにモテる男は、ポジティブで、健康的な男だと思ってるんです。あの曲は、ダンス☆マンさんが作ってる曲で、音もすごいカッコいいファンキーなダンスミュージックになっていて、メロディーも素晴らしいんですけど、そこにさらに皆さんでーー宮藤官九郎さんもそのなかにいらっしゃったそうなんですけどーーあり得ないくらいのポジティブな歌詞を……「息を吸える、息を吐ける……やった!」みたいな。すげえなあっていう。
山口 隆)なるほどね。
綾小路翔)仔犬飼ってみたらかわいい……やった! みたいな、当たり前だけど、なんにでもポジティブにいけるっていう、これが実際にはね、もっと影のある男だったり、哀しみを背負った男だったりしても、それでも前向きに生きることができる……前回の、ユーモアを持っている男がかっこいいっていうのを一緒で、どんなに追い込まれても、どんなにニッポンが不景気だろうが、どんなおそろしいことが起きても、女の子に「この人といたらなんとかなるかも」って思わせるのが最強なんじゃないかと思って、自分のなかでは常に背中を押してくれる曲が、このはっぱ隊の「YATTA!」という曲で。
山口 隆)あー。
綾小路翔)自分たちも、はっぱ一枚だけつけてカバーしたことあるんですけど。
山口 隆)ぶははは。
綾小路翔)YOU TUBEなんかでも見れると思うんで、よかったら我々の、全世界にメンバーが散らばって、いろんな各国の名所の前で、パンツ一丁で「YATTA!」を踊るっていう映像がありますんで、ぜひご覧いただければと思っております(笑)。
PHOTO:AZUSA TAKADA

今回の企画で、対談させていただくんだったら、やっぱり翔さんと喋らせていただきたいと思ってお願いしました。まだまだ話し足りないですね。僕はもう笑いっぱなしで……いや、こちらこそ、お話しして思ったのは、人に話せるような話術の持ち主というか、そういう存在というのは、バンド界でも翔さんくらいじゃないですか。ここまでこう、バラエティのところまでバーッといけたりするのは。ほんとに素晴らしい一ヶ月でございました。

もうレギュラーにしたらいいんじゃないですか、これ(笑)。ほんとに山口さんの話術に……以前から僕、MCのトークとか、すごいなあと思っていて。抱腹絶倒の話から、それこそみんなが心を熱くするような言葉まで、ほんとにこの人は詩人だし、言葉にちからを持ってる人だなと思ってたんですけど……。いやあ、ほんとに、勉強になりました。