Live Report

ライブレポート

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FM802 & FM COCOLO HOLIDAY SPECIAL Songs in the Air

9月23日(火・祝)、長野県・八ヶ岳高原音楽堂にて、『FM802 & FM COCOLO HOLIDAY SPECIAL Songs in the Air』が開催された。音楽プロデューサー・小林武史率いるオリジナルバンドと、ボーカリストとして宮崎朝子(SHISHAMO)、三浦透子、Salyu、ROTH BART BARON、スガ シカオが出演。楽器や照明に必要な電力はすべて、トヨタ自動車の「MIRAI」「CROWN FCEV」が供給する、使用時にCO2を排出しない水素エネルギーが活用された。緑に囲まれて澄んだ空気が流れる八ヶ岳高原にて、時代を超えて受け継がれる日本の名曲とともに、地球環境を未来へと繋いでいくためのメッセージが届けられた。

この日のために結成されたオリジナルバンドは、小林武史(Key・Pf)の他、Bank Bandのメンバーでもある小倉博和(Gt)、四家卯大(Cello)、沖祥子(Violin)と、「パーカッションの心でドラムを叩ける人」であることからこの場に合わせて小林が選出した佐藤直子(Dr)という5人編成。そこにトップバッターとして登場したのは、宮崎朝子(SHISHAMO)だ。

宮崎はセンターに位置付き、小林と目を合わせて頷いてから、“曇り夜空は雨の予報”でこの日のライブをスタートさせた。“君の大事にしてるもの”で果敢なギターソロでも魅せたあと、ギターを置いてあえて曲名を言わずに歌い始めたのは、小林がプロデュースを手がけた国民的名曲“真夏の果実”(サザンオールスターズ)。これは宮崎による選曲だといい、彼女ならではの甘酸っぱさが加わった“真夏の果実”に仕上がっていた。歌い終えると、「リハーサルからいい雰囲気で楽しくやらせてもらっていたので終わっちゃって寂しい」とこぼしていた。

次に登場したのは、映画『ドライブ・マイ・カー』で「日本アカデミー賞新人俳優賞」を受賞し、ボーカリストとしても抜群の表現力を持つ、三浦透子。グランドピアノとギターの伴奏による、彼女の力強く美しい歌声が際立ったMr.Children“Tomorrow never knows”のカバーはあまりにスペシャル。その後、歌詞に《八ヶ岳》が含まれている彼女の代表曲“私は貴方”で会場を包み込むと、思わず小林は「素敵でしょう?」と観客に語りかけた。そして、小林が初めて三浦を観たライブでカバーしていた“Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜”(YEN TOWN BAND)を、三浦のリクエストによって小林らの生演奏で歌うことを実現。最後に三浦は「これだけ素敵な自然の中で、水素エネルギーの取り組みを前に進めていこうというイベントに参加できたことが光栄です」と喜びを伝えた。

続いては、小林いわく「もっともコンセプチュアルなパート」。まずはSalyu、ROTH BART BARONがステージに登場。SalyuはROTH BART BARON・三船の声を「地球の奇跡」と表現したが、両者ともに、人々の心の中にある影や社会の憂いなどを溶かし、そして清らかな光を灯すような、そんな力のある声の持ち主だ。2人は、Lily chou-chou“回復する傷”、Salyu“landmark”、ROTH BART BARON“HERO”の3曲をともに歌った。

そこに、三浦透子もジョイン。3人が歌ったのは、映画『リリイ・シュシュのすべて』に書き下ろした“アラベスク”を、この日に合わせて岩井俊二が歌詞を書き換えたもの。タイトルも“ファラスティーンの歌”と変えたこの曲について、小林はこう語った――「耳を澄ますと、世界では争いが続いていて、パレスチナやガザの惨状をニュースで見るたびにみなさん胸が痛いと思います(中略)今回、何かパレスチナに繋げられるんじゃないかなと思い、“アラベスク”を取り上げてみたいと思いました。岩井くんに電話しまして、今の時代に合わせた歌詞を書いてみるのはどう思います?って聞いたらぜひと快諾してくれました(中略)音楽はときに、国境や争いを越えて人と人を繋ぐ力を持っているはずなので、今日ここで、遠く離れた人々に共鳴するような想いを持って演奏したいと思います」。“ファラスティーンの歌”の歌詞には、岩井がパレスチナへ訪れたときの経験も織り込まれていた。

さらに「Lily chou-chouの曲とこの曲を繋げてやったことは多分、一回もなかった。岩井監督から詞をいただいて、八ヶ岳の空気とこの気持ちの中では繋がると思った」と言ってから、Salyu、三船、三浦の3人で“to U”を歌い届けた。

最後のステージを務めたのは、スガ シカオ。小林が作曲、スガが作詞した“ぼくの街に遊びにきてよ”からスタートし、“Progress”ではアグレッシブな歌と演奏で音楽堂をライブハウスの空気にチェンジ。〈“あと一歩だけ、前に 進もう”〉という歌詞に合わせて観客が人差し指を高く上げたシーンは、音楽とはまさに人々を未来へ進めるためのクリーンなエネルギーであることを表していた。そして、「今の社会に響くものがある曲」「ずっと後世に残るメッセージソング」として、フォークの神様・岡林信康の“私たちの望むものは”をカバー。これは1970年に誕生した曲であるが、スガの歌とこのバンドの演奏を通すと、今を生きる私たちの気持ちを代弁し、行くべき先の道標になってくれるような歌として鳴り響いた。

最後に小林は「この会場の“透明な感じ”や、水素エネルギーの“クリアさ”は、これから僕らが求めていかなくちゃいけないところだと思います。耳を澄ますイメージでいると、いろんなことが見えてくる」とコメント。忙しない日常に休符を打ち、自然の美しさの中で極上の演奏によって受け継がれる日本の音楽に浸り、自分の心の汚れを落としながら、地球の未来や国境を越えたところにいる人へ想像を膨らませる。そして、優しい気持ちを明日へと持って帰る。それは『ap bank fes』の原点ともいえるが、それに連なる、小林が作り出す音楽と社会を接続させたイベントとして『FM802 & FM COCOLO HOLIDAY SPECIAL Song in the Air』は幕を閉じた。

テキスト:矢島由佳子

撮影:山川哲矢

FM802 & FM COCOLO HOLIDAY SPECIAL Songs in the Air
2025/9/23(火・祝)
@八ヶ岳高原音楽堂

ARTISTS:

宮崎朝子(SHISHAMO)
三浦透子
Salyu
ROTH BART BARON
スガ シカオ

SPECIAL BAND:

小林武史(Acoustic Piano、Keyboard)
小倉博和(Guitar)
四家卯大(Cello)
沖 祥子(Violin)
佐藤直子(Percussion)

SONG LIST:

曇り夜空は雨の予報 by 宮崎朝子
君の大事にしてるもの by 宮崎朝子
真夏の果実 by 宮崎朝子

Tomorrow never knows by 三浦透子
私は貴方 by 三浦透子
Swallowtail Butterfly ~あいのうた~ by 三浦透子

回復する傷 by Salyu & ROTH BART BARON
landmark by Salyu & ROTH BART BARON
HERO by Salyu & ROTH BART BARON
アラベスク by Salyu, ROTH BART BARON & 三浦透子
to U by Salyu, ROTH BART BARON & 三浦透子

ぼくの街に遊びにきてよ by スガ シカオ
Progress by スガ シカオ
私たちの望むものは by スガ シカオ


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